新・ことば事情
4558「白き山」
2012年1月7日の日経新聞夕刊の「文学周遊(296回)」は、歌人・斎藤茂吉の、
「白き山」
を取り上げていました。
それを読んでいて、昨年亡くなった息子の作家・北杜夫の若い頃の作品、
「白きたおやかな峰」
を思い起こしました。このタイトルは、父・茂吉の「白き山」を意識したのではないか?と。
このタイトル、文法的にいうと「口語」ならば、
「白いたおやかな峰」
また「文語」であるならば、
「白きたおやかなる峰」
となるはずですが、あえて両方が混じった形にしたのでしょうか?「うっかり」だったのか?そういう指摘が発表当時からあるというのを読んだことがありましたし、北さんご本人は「指摘されるまで気づかなかった」と書いているのも読んだことがある気がします。
少なくとも、
「白き」
に関しては、父・茂吉の作品「白き山」が、北杜夫の頭には刷り込まれていたのではないか?と思ったのでした。