新・ことば事情
4597「英国王のスピーチ」
去年(2011年)の11月に、遅ればせながら2011年3月のアカデミー賞受賞作『英国王のスピーチ』のDVDを借りてきて観ました。ちなみにタイトルの読み方ですが、
「英国王」=「エイコクオウ」
です。「イギリス王」ではありません。アナウンサーとしては「英国」と書かれていたら「イギリス」と読み替えるくせが付いていますが、日本語としては「えいこく」と「イギリス」は別物土地手、「えいこく」のほうが、やや改まったニュアンスを持って使い分けられているのではないでしょうか。
映画は、大変面白い(興味深い)ものでした、特にアナウンサーとしては。
たとえば、吃音で人前で上手に話せない英国王が、きっちりとしゃべれるように訓練をするシーン(もちろん、ほぼ全編がそういう趣旨ですが)で出てきた日本語字幕の滑舌練習用の言葉は、
「腫瘍摘出手術中の主治医には手術内容の守秘義務が」
でした。英語でどう言っているのか、また今度確認しておきますが。これは、そのまま、新人アナウンサーの滑舌練習に使えますな。いただき!2005年に改定した読売テレビのアナウンサー教本の中に新しく取り入れた滑舌練習文には、
「手術室内で、肺気腫の騎手、摘出移植手術中の手記」
というのを載せましたが、似てますね。
「魔術師、派出所にて手術中。手術中に集中術の手記を著述」
というのもあります。さ、皆さん、ご一緒に。
そのほか、気づいたのは、
「横隔膜を鍛えないと」
「ロングトーン」
「腹式呼吸」
「私に話し掛けるように」
「Mの前にNを伸ばす」
というドクター・ローグの言葉は、全部アナウンサーの訓練に共通したものです。全体としては、『マイ・フェアー・レディ』のような映画ですよね、ある意味。ヒギンズ教授の役をドクター・ローグがやっている。
「スワニー河」「草競馬」といったおなじみのフォスターの歌に乗せてしゃべる、というのも、「歌なら吃音が出ない」という、リラックスした状態でしゃべる練習になっています。。
クライマックスのシーンに近づくところでのBGMのメロディー
「ターンタッタ・ターンタ、ターンタッタ、ターンタ」
はマーラーかな?
ともあれ、一見、いや二見の価値のある映画ですね。