新・読書日記 2012_011
『イエスの言葉 ケセン語訳』(山浦玄嗣、文春新書:2011、12、20)
著者の山浦玄嗣さんは、1940年生まれ。宮城県気仙沼市在住の医者であり、クリスチャンであり、また気仙沼の方言「ケセン語」訳で聖書を訳した人でもある。東日本大震災の前から、言葉の世界では有名な人であった。
今回、その山浦さんの住む気仙沼を、地震と津波が襲った。そんな中で山浦さんは、苦難の中から立ち上がるべく、「ケセン語」に訳された聖書の言葉を拾い、復興へ向けて立ち上がろうとする人たち(自分たち)に重ねた。
「神様の思い」から「復活」まで38の言葉は、これまでの共通語に訳された聖書の言葉では届かなかった「聖書」の思いが、「ケセン語」という素朴な響き、噛み砕かれた平たい表現で、立ち上がり迫ってくる。
最後の「復活」を読み終えたとき、気仙沼のそして東北の「復活」を信じた。読み終えてからマーラーの交響曲第2番「復活」のCDを久々に聞いた。
「冷たい雪とまっ黒な泥濘におおわれた見わたす限りの瓦礫の野を前にして、呆然と立ちつくすわたしの肩をがっちりとつかんで、イエスは言います。『おい、元気を出せ、この生き死人(しびと)め。この俺は死んでもまた立ち上がったのだぞ。その俺がついているんだ!さ、涙をふけ。勇気を出して、いっしょにまた立ち上がろう。お前のやるべきことが、そら、見えるだろう!』」
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