新・ことば事情
4592「逆三角形」
去年秋の新聞用語懇談会の休憩時間に、NHKの原田邦博さんから、こう言われました。
「『逆三角形』って言葉は日本独特なんだよ。外国にはそういう言葉はない。だって、『三角形』はどこから見ても『三角形』で、『逆』の元になるものがないんだから。これって日本特有でしょう?」
たしかに。
あまり気にしたことはなかったですが、マッチョな男性の体形などを示すのにも何気なく使っていた「逆三角形」という言葉、考えれば不思議です。
原田さんがおっしゃるように、英語ではどんな「三角形」でも、普通に「三角形」「トライアングル」としか言わないでしょう。みんな違ってみんないい。金子みすず。
でも日本は「三角形」の形そのものでなく、「位置関係」「上下左右」が決まっている。世間(社会)の中で、個人の在り方が決まるようなものかもしれません。
これって、本当の意味での「個人主義」はないんですよね。
検察の暴走と言われる事件(検察官が職務に関して裁判になる時点で、失格。しかも捜査方法に関して。審判がルール違反したら、試合が成り立たない)などは、世間の中で個人が目立ちすぎると叩かれて、個人としての自立を許さない傾向を表しているのではないでしょうか。
「逆~」
という言葉は、「正」「本来あるべき姿」があってこそです。少なくても「一対一」対応で、バリエーションを認めないというあり方なのかなあ。
「逆三角形」という言葉が生まれる背景は、どうなんでしょうね?他の国にもあるのかな?「逆三角形」。
(追記)
NHK放送文化研究所の塩田雄大さんからメールを頂きました。
「韓国語では、たぶん『逆三角形』という意味の言葉は使うと思います。『鍛え上げた身体』を指して使います。日本語からの借用かもしれませんが」
とのことでした。ご指摘ありがとうございます!
(2012、1、31)