新・ことば事情
4586「捨て去ったとみて」
2011年9月13日、読売テレビの夜のローカルニュースを見ていたら、神戸市で首のないハト8羽の死骸が放置されているのを見つかったというニュースを伝えていました。例の「酒鬼薔薇事件」の始まりを髣髴させる、いやなニュースです。(もう14年も前の出来事になってしまいました。)
この原稿、Iアナウンサーが、
「(何者かが)ハトの死骸を捨て去ったとみて」
と読んでいましたが、これはちょっとおかしい。
「(何者かが)ハトの死骸を捨てて、立ち去ったとみて」
あるいは、
「(何者かが)ハトの死骸を捨てたものとみて」
ではないでしょうか?私個人の感覚では、「捨て去った」は「捨てる」+「去る」ではなく、「捨てる」ことによって「(葬り)去る」というイメージが強いです。つまり「去る」は動詞ではなく補助動詞的な感じ。
ところが、『広辞苑』で「捨て去る」を引くと、
「物事を思い切りよく捨てて、その場から離れる」
とあって、「離れる」(つまり「去る」)という意味が記されています。『精選版日本国語大辞典』『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』『新選国語辞典』も、そうでした。しかし、『デジタル大辞泉』は、
「思い切り良く捨てて、気にかけずにいる。(例)過去を捨て去る」
とあり、「離れる」の意味は書かれていませんでした。『明鏡国語辞典』も、
「思い切りよく捨てて、かえりみない。(例)未練を捨て去る」
とありました。『岩波国語辞典』『新潮現代国語辞典』は「酢豆腐」なんか載せてるのに「捨て去る」は見出し語にありませんでした・・。