新・ことば事情
4579「罪づくり」
NHK放送文化研究所が出している『放送研究と調査』の2011年11月号に載っていた「ことばのゆれ調査(平成23年11月)から②」は、
「女は男より『罪作(つみつく)り』」
という、なにやら思わせぶりなタイトルです。
これはさまざまな複合語の後半部分が、「連濁するか、しないか」に関する調査報告なのです(全国の20歳以上の男女1323人回答)。
たとえば「睡眠不足」の「不足」は「ぶそく」と濁るのか、「ふそく」と濁らないのか、ということに関して、NHKの2001年の放送用語委員会決定では、
1)ブソク、2)フソク
として、濁るほうを先にしながらも、濁らない読み方も認めているのです。しかし、今回の調査では、
「ブソク」=90%、「フソク」=10%
と、圧倒的に「濁る」人が多く9割の人が「濁る」と答えたそうです。年齢別で見ると、20代~50代は9割以上が「濁る」と答えたのに対して、60代以上で「濁る」と答えた人は82%と、やや少なめだったようです。
こんな具合に調べた中でも、「へえー」と私が思ったのは、
「罪作り」
という言葉。当然私は、
「つみつくり」と「濁らない(清音)」だと思いました。NHKのアクセント辞典でも、1943年から1951年、1966年、1985年、そして最新の1998年版のものまで一貫して、
「つみつくり」
という連濁しない形で掲載されているものの、今回の調査では「20代の若者」だけが、
「つみづくり(濁る)」 =55%(男63%・女44%)
「つみつくり(濁らない)」=44%(男37%・女55%)
と、「濁る」と答えたほうが多かったそうなのです!しかも20代男性は、圧倒的に「づくり」と濁る人が多い!(63%)という結果が出たそうです。なんでやろか?ちなみに、「罪作り」の読み方を「ミヤネ屋」の若いスタッフ(20代)の男女に聞いてみると・・・驚くなかれ(?)、
「20代の男性スタッフのみ『罪づくり』と濁った」
ではないですか!データどおり!!
確かに、ほかの「~作り」という言葉は、ほとんどが「濁る」、つまり「~づくり」となっているようで、そこからの「類推」が働いたのかもしれませんが。『NHKアクセント辞典』(1998年版)に載っている「~作り」で「濁らない」のは、「罪作り」「お作り」「花作り」「酒造り」の4語だけで、あとの「行き作り」「行け作り」「一夜作り」「糸作り」などの40語は「づくり」と濁るのです。「両方」載っているのは「庭作り」だけだそうです。
また、
「後腐れ」
という言葉も、「20代」は3割以上(=34%:男39%、女27%)が「あとぐされ」と「濁る」そうです。30代で濁るのは14%、40代14%&、50代18%、60歳以上は19%ですから、20代の「濁る」率は異様に高い。私はもちろん「あとくされ」と濁りません。しかし実は、『NHKアクセント辞典』は「両方載せている」そうです。
そして、
「腕組み」
という言葉に関しても、私は「腕ぐみ」と濁りますが、「20代」は42%(男39%・女47%)が「うでくみ」と「濁らない」そうです。これにもびっくり!
これも「ミヤネ屋」の若いスタッフに聞いてみたら、20代女性スタッフの一人が、
「腕くみ」
と「濁らず」に言うではあリませんか!その彼女に、
「腕くみ、というのはどういう動作を言うのか?」
を聞いたところ、驚いたことに彼女、
「ボーイフレンドと腕を組むこと」
と答えました。こちらは、
「仁王立ちしたコーチが『腕ぐみ』をしている」
のように使うと思っていたのに。「うーん」とこちらが「腕ぐみ」をしてしまう状態。
つまり、「くみ」と「ぐみ」、「濁る・濁らない」で「意味の分化」が若い女性の間で始まっているのかも!?と思いました。
同じ意味で使っていると思っていた言葉が、世代によって変わってきていることの一つの証拠ですね・・・。