新・ことば事情
4573「『古事記』のアクセント」
1月13日の日本テレビ『スッキリ!』に出ていた若い男性アナウンサーが、「古事記」を「中高アクセント」で、
「コ/ジ\キ」
と読んでいたので、「え!」と思いました。私は「頭高アクセント」で、
「コ\ジキ」
だと思っていたのですが。「中高アクセント」は関西弁では、
「乞食」
のアクセントです。(標準語アクセントでは「乞食」は「コ/ジキ\」(尾高アクセント)です。)
『NHKアクセント辞典』には「古事記」は見出し語では載っていません。
『新明解日本語アクセント辞典』には、「頭高アクセント」の
「コ\ジキ」
で載っていました。そして、
「古は コ/ジ\キ」
とカッコ内に記されて、「中高アクセント」も載っていました!
よく考えたら「○○記」は、「風土記(フ/ド\キ)」のように
「○/○\記」
という「中高アクセント」もありえますね。
アクセント表記のある『新明解国語辞典』(第6版ですが)には、「見出し語」として「古事記」がありませんでした。なんでだろ?『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』には見出し語として「古事記」は当然載っていましたがアクセントの表記はありません。アクセントも載っている『新選国語辞典』には見出し語の「古事記」ありましたが、アクセント表示がないのか、もしくは「平板」なのか、「アクセント核の色づけ表記」がありませんでした。
NHKの知り合い原田邦博さんにメールで聞いたところ、
「『古事記』は(放送では「頭高」の))『コ\ジキ』と読んでいます」
とのこと。また『日本国語大辞典』でも「標準アクセント」は、
① 頭高 ②中高
の順で載っているとのことです。
読売テレビのアナウンス部で聞いてみたところ、
「頭高」=3人(40~50代男性アナ)
「中高」=3人(20代 関西以外出身の男女アナ)
「平板」=3人(20~40代 関西出身男女アナ)
と分かれました。
(追記)
2012年2月に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、各社に「古事記」のアクセントに関して「コ\ジキ」(頭高)か?「コ/ジ\キ」(中高)か?「コ/ジキ」(平板)か?と聞いてみました。それによると、
(毎日放送)関西では「中高アクセント」だと、「ルンペン」(乞食)の意味になってしまう。
(読売テレビ)「風土記(フ/ド\キ)」のように、「○○記」という場合は「中高」もあるのではないか?
(読売テレビ)若いアナウンサーの中には「古事記」の存在そのものをよく知らない者もいた・・・。
(NHK)もともと昔は「中高」の「コ/ジ\キ」だったが、現在は「頭高」の「コ\ジキ」が妥当であろう。今年は「古事記」編纂されて1300年の「メモリアル・イヤー」なので、今後、よく出てくるかも知れない。
ということで、各社それほど気にはされていないようでいた。
そして、きょう(6月17日)のNHKのお昼のニュースの関西ローカルで、三瓶宏志アナウンサーという人が、
「コ/ジ\キ」(中高)
で読んでいました。調べてみたら「さんべ・こうじ」さんという名前で福島県(会津)出身(「三瓶」姓は福島に多いのかな?)、1969年生まれのようです。
(2012、6、17)