新・ことば事情
4570「ワンーボール・ノーストライク」
2011年春のセンバツ高校野球のNHKラジオ実況を聞いていたら、アナウンサーが、
「ワンーボール・ノーストライク」
と言っていました。これまでは、
「ストライクが先で、ボールが後」
だったのが、メジャーリーグにならって「ボールカウントを先に言う」ようになったのです。そもそもこれまでの「ストライクを先にいう」のは「ピッチャー目線」、「守りの姿勢」だったではないでしょうか。これが「バッター目線」「攻撃優先」になったのかな?
2011年4月12日プロ野球開幕の中継のテレビ画面表示も、これまでの見慣れた、「SBO」ではなく、
「BSO」
に変わっていました。
また、2011年4月19日の甲子園球場での「阪神対巨人」戦。ABC朝日放送の実況アナウンサーは、「ツーボール・ツーストライク」の状況では、
「ツー・ツー」
と言っていました。これは「ボール」と「ストライク」の数が同じですから、「ボール」「ストライク」を省略した「これまでと同じ言い方」でもOKです。「ワン・ワン」も、そうですね。問題は「フルカウント」。聞いていたら、これまでは、
「ツー・スリー」(スーストライク・スリーボール)
と言っていた場面では、
「スリーボール・ツーストライク。フルカウント」
と、「ボール」を先に言いそのとあに「ストライクカウント」を、更に「フルカウント」と付け加える丁寧な説明をしていました。
「ツー・ワン」
と言うと、これまでは「ツーストライク・ワンボール」でしたが、現在は、
「ワンストライク・ツーボール」
と全く逆になってしまうので(「ワン・ツー」も同じですね。)こうした省略した言い方には、注意が必要ですね。・・・と「2011年4月19日」に書きかけてほったらかしになっていました。
2011年12月に、7年ぶりに出た『新明解国語辞典』(三省堂)の「第7版」を「読んで」いたら、「ワン」という項目の用例で、野球のカウントの省略形が載っていたのですが、これは「第6版」までの記述と変わっていませんでした。チェックミスか?順番を逆にする必要があったのではないでしょうか?
(追記)
2010年の2月(ちょうど2年前)に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、テレビ大阪の植草アナウンサーからこんな質問が出ていたという記録が出てきました。質問は、
「プロ野球の審判部会議で今年からカウントのコールを従来のストライク、ボール(SB)の順番を入れ替えてボールカウントから先(BS)にコールされることが決まりました。キャンプから実施して紅白戦、オープン戦を通じ公式戦開幕までに徹底を図るそうです。大リーグの他国際大会でもボールカウントを先にするのが基準で、アマでも1997年から実施されていますが、日本のプロ野球でも実施されるのにあたり、中継やスポーツニュースではどう対処されるのでしょうか?」
これに対して、ほとんどの社は当時、
「対応しない。これまでの『SBO』のまま」
ということでした。理由は、
「スタジアムのバックスクリーンの表示が変わらないから」
また、
「スポーツコーダー(「SBO表示をする機械」)を換えるのに金がかかる」
「視聴者が付いて来られない」
「アナウンサーが対応できない」
といった理由も挙げられました。また特にラジオで「ワン・ツー」と言った場合に、
「ワンストライクなのか、ワンボールなのかが分かりにくい」
という理由も。また、
「過去にWBCやソフトボールの国際試合で『BS(ボール・ストライク)』の順番で実況をしたことがある局もあったが、画面表示は『国際映像』をそのままもらったものだった」(TBS)
「それように特別に作ったりした」(テレビ朝日)
という意見も出ました。
しかし結局、その1年後の去年(2011年)、各球場のスコアボードも「BSO」に改修されたこともあって、放送局もそれにならってコールすることになりました。
『三省堂国語辞典・第7版』も、そのあたりの確認をしてほしかったです。
(2012、1、30)