新・読書日記 2011_213
『養老孟司の大言論Ⅰ・希望とは自分が変わること』(養老孟司、新潮社:2011、2、25)
養老先生の話は難しい。一つ一つはなるほどと思うし、全体で主張したいことはわかるのだが、その一つ一つのつながりがわかりにくい。階段を一つ飛ばしで上っているような感じだ。つなぎ部分がわからない。独創的な人は自分はわかっているから省略をする。凡人はその飛躍についていけない。もう少しだけ、丁寧に説明がほしい。きってこんなに丁寧に何度も繰り返していろんな例を挙げて説明してるじゃないか!とおっしゃるだろうが、それらの例がことごとく、一段飛ばしなので、例が増えれば増えるほど、謎も増える、そんな印象を持った。これまで何冊か養老本を読んだが、わかりにくいけどところどころわかるのが魅力。「だれだ、『個性あるこの私』、『世界に一つだけの花』なんてバカなことをいった奴は。」(224ページ)なんてところはパチパチパチ!相田みつをや、金子みすゞを批判なく崇拝する人を眉唾で見るのは、こういう養老先生の感性に共感するから。相田や金子の信奉者は決して悪い人ではないが、自分でいい人だと信じて疑っていない部分がある。そこが悪い、と思うのである。きっと養老先生もそれは同じじゃないかなあと思うのです。
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