新・ことば事情
4532「幕を引くか幕を下ろすか」
10月28日「ミヤネ屋」で、歌舞伎俳優の中村芝翫さんが亡くなったニュースを放送しました。その際に、ディレクターから、
「『人生の幕を降ろした』という表現を使っていいでしょうか?」
という質問を受けました。これに対して私は、
「中村芝翫さんは『歌舞伎俳優』。歌舞伎では、幕は『(上から)降ろさない』で、『(横から)引く』。だから『人生の幕を引いた』もしくは『人生の幕を閉じた』がいいでしょう」
とアドバイスしました。
「幕引き」
という言葉もありますね。
比喩表現を使うときには、その表現の背景と、実際に使われる相手との間に齟齬(そご)がないか、確認した方がいいと思いました。
それにしても、そのディレクターも、よく質問でいてきたな。すごい!あんまり気づく人は、いないのではないでしょうか?
結構、細かいところを気にしているんですよ。
(追記)
ちなみに、これと同じような話を、以前にも書いていました。
平成ことば事情1429「幕を引く?おろす?」で8年前(2003年)の10月のことでした。歴史は繰り返すと・・・。書いた本人は、もうすっかり忘れていましたが、引っかかる場所は同じだということですね。