新・ことば事情
4525「『つめあと』の漢字表記」
「ミヤネ屋」の中で、
「台風のつめあと」
という言葉が出てきました。このスーパーの表記を、
「爪跡」
にしました。これ、実は『新聞用語集2007年版』(二本新聞協会)と『読売スタイルブック2011』(読売新聞者)ではともに、
「爪痕」
となっているのですが、「痕」は、
「体に付いた傷のあと」
など「範囲が狭いもの」に使います。体に付いた「爪痕」はもちろん「痕」で良いのですが、比ゆ的に使われる場合の「台風の爪痕」には、私は違和感があります。例えば「焼け跡」では「痕」を使いませんし、
「『痕』か『跡』か迷ったときには『跡』を使う」
と『新聞用語集』には書かれています。
実は「爪」も「痕」も去年の11月30日の常用漢字の改定で新しく「常用漢字」の仲間に入りました。ですから、(「爪」も「痕」も使えなかった)それまでは、
「つめ跡」
と表記していたのです。ですから、「跡」も間違いではない、むしろ「跡」の方が良いのではないか?と個人的には考えます。
常用漢字の改定で「爪」も「痕」も新たに常用漢字に入ったため、表記の標準は、
「爪痕」
となりました。ただ現状では、
「まだ『痕』を『あと』と読むのは慣れないであろう」
という判断をする放送局や、
「『痕』は範囲が狭く感じるので『跡』を使う」
「従来の『つめ跡』の方がなじみがある」
という放送局もあって、
「爪あと」「爪跡」「つめ跡」
という表記も混在しています。
もう1年ぐらい様子を見たら、一つの表記に収斂していくのか、それとも混在したままで個性を主張するのか、注目します。