最近よく耳にし、目にする言葉に、
「タブレット」
があります。情報携帯端末、つまり「スマートフォン」や「ipad」などのことを言うようです。しかし、昔(これまで)は「タブレット」というと、
「(薬などの)錠剤」
のことを言ったと思うのですが、いつからこういう呼び方になったんだろう?
と思っていたら、2011年の「新語・流行語大賞」のノミネート60語の中に、しっかりと「タブレット」が入っていました。やはり「新語」であったか!
(2011、11、13)
(追記)
『宮澤賢治、ジャズに出会う』(奥成達、白水社:2009、6、30第1刷)という本を読んでいたら、
「こつちは最終の一列車だ シグナルもタブレットもあつたもんでなく とび乗りのできないやつは乗せないし とび降りなんぞやれないやつはもうどこまででも載せて行つて 北国あたりで売りとばしたり」
という文章の中に、
「タブレット」
が出てきました。これは大正15(1926)年、同人詩誌の『銅鑼』編集発行・草野心平)7号に発表された「『ジャズ』夏のはなしです」という詩だそうです。それを改稿した「岩手軽便鉄道 七月(ジャズ)」という作品は『春と修羅第二集』に収録されていて、そこにも「タブレット」は出てきます。
宮沢賢治の時代にすでに「タブレット」はあったのか?
『広辞苑』(電子辞書)で意味を調べてみると、この「タブレット」は、
「鉄道の通票(つうひょう)」
と載っていました。「通票」を引くと、
「鉄道の単線運転区間で、列車の安全確保上、1区間1列車運転をするために、列車に携帯させる証票。閉塞機を用いるものをタブレット、そうでないのをスタフという。」
あら。また疑問が。「閉塞機」って、なんだ?と思って「閉塞機」を引くと・・・載っていない・・・代わりに「閉塞装置」がありました。
「閉塞装置」=鉄道で、閉塞区間に二つ以上の列車を同時に運転させないための装置。閉塞信号装置。」
装置の「目的」はわかりましたが、その形状などは全然わかりません。もしかしたら、時々見ることがある、
「運転手さんが受け渡ししていた、シャボン玉を作る"針金の輪っかの親玉"みたいなヤツのこと」
かな?あんな物で、閉塞区間の列車の衝突を防げるのかな?
それでも『広辞苑第6版』はえらい!ちゃんと「タブレット」の3つの意味を書いてある。
① 錠剤
② 鉄道の通票
③ コンピューターで、ペンで平面版をなぞって図形を入力する装置
この3番目の「タブレット」が最近出てきた「タブレット」なんだろうけど、さらに最近のタブレットは「ペン」でなくて「指」でも入力できるようになっているのですね、きっと。
『広辞苑第6版』に比べるとやはり少し古い『精選版日本国語大辞典』は、
「タブレット」=ヨーロッパで、ルネサンス以降、男子が着用した上着。カラダにピッタリしていて、ウエストからすそはひろがっているが、丈は短い。
というものしか載っていない。これって、
「リボンの騎士」
が着ていた服装のことですよね?
『三省堂国語辞典・第6版』(=紙の辞書)もこう書いていました。
① 錠剤
② (単線鉄道で)駅長から運転手にわたされる、通行票。通票。(絵の→印のところに入れてある)
③ 銘板。書字板。
あ、「通票」はやっぱり「シャボン玉を作る針金の親玉」だ!『三省堂国語辞典』えらい!ちゃんと絵(イラスト)が書いてありました!わかりやすい!
でも、パソコン系統の「タブレット」は書いてないな、と思ったら・・・・
「タブレットピーシー(PC)」=液晶画面にペンで文字や絵を入力する、携帯型のパソコン」
とちゃんと載っていました!うーん、やるなあ!
単なる流行語ではなく、使われる言葉を選んで載せる、それが国語辞典(辞書)の醍醐味であり、難しいところですよねえ。
(2011、11、22)