新・ことば事情
4487「端におってやる」
9月11日、和歌山県・那智勝浦町の寺本真一町長。台風12号によって亡くなった娘さんの遺体と対面して、こう話しました。
「端に、おってやるのが精いっぱい」
この「端」は「はた」と読みます。というか「はた」と言っているのを漢字で書くと「端」になるわけです。しかし、ふだん私たちが「端」と書かれたものを読むのは、
「はし」
あるいは、ちょっと関東風になまって、
「はじ」
と読むのではないでしょうか。あまり「はた」とは読みません。しかし、これを平仮名で、「はた」と書くとわかりにくい。「端」の常用訓に「はた」は含まれているのですが。
「はた」の意味は「そば」。
「囲炉裏端」
のような言葉では使われますが、単独で「端(はた)」というのは、あまりないのかもしれません。ということはテレビのスーパー表記では、漢字で書いてルビを振る、
「端(はた)」
という表現が一番いいのかなとも思いました。
それにしても寺本町長の心中を察すると・・・・。なんとも言葉がありません。
(追記)
いま読んでいる『鉄の骨』(池井戸潤、講談社:2009、10、7第1刷・2010、7、1第7刷)の中に、「端」にルビを振ったものが出てきました。最初が「はた」で、その後の2回は「はな」でした。
*「狭い通り沿いのモダンな八階建ては、端(はた)からみると随分と羽振りが良さそうに見えるから皮肉だ。」(23ページ)
*「そんな奴らに談合がどうのこうのという資格なんて、端(はな)からないっての。」(53ページ)
まだ全部は読んでいないのですが、このあとも出てくるかもしれません。
(2011、10、31)