新・ことば事情
4485「『凱旋帰国』は重複表現か?」
「平成ことば事情679凱旋」「平成ことば事情3572凱旋帰国」で、「凱旋帰国」という言葉は「重複表現」ではないか?ということを書きました。というのも、「凱旋」に既に「帰る」という意味が含まれているからです。
しかしその後、「凱旋」には「国に」という「方向性」は含まれていないので、使えるのではないか?と考え出しました。
『三省堂国語辞典』を引いてみたところ、「凱旋」の用例のところにしっかりと、
「凱旋帰国」
と記されていたのです。そこで「なでしこジャパン」が女子ワールドカップで優勝した際に「凱旋帰国」という表現のスーパーを、そのまま直さずに使ったところ、「ミヤネ屋」のスタッフからこんな意見をもらいました。
「以前、WBCやオリンピックの時に、「『凱旋(がいせん)帰国』という表現は使わないで!と、道浦さんから日々のメールで言われた」
たしかに以前、送ったような気がします・・・・。
「凱旋帰国」が「ダメ」とした理由は、2つ考えられまして、
(1)「凱旋」は「勝って帰る」ことなので、原則「優勝でない場合には使えない」
(2)「凱旋」は「勝って帰る」ことなのでこれに「帰国」と付けた「凱旋帰国」は「重複表現」にあたる
ということでした。
今回の「なでしこ」は「優勝」したので、「凱旋」は使えます。(1)はクリアです。
問題は(2)の「重複表現」なのですが、「凱旋」は「勝って帰る」ことですが、「どこに帰るのか?」の規定はありません「国」なのか?「地元」なのか?「所属チーム」なのか?そういう意味では、「国」と規定する意味での「帰国」をあわせて「凱旋帰国」とするのは、
「許容範囲ではないかなあ」と思います。
辞書では、『三省堂国語辞典』が「凱旋」の用例に「凱旋帰国」を載せています。
<結論>
「なでしこジャパン」に「凱旋(がいせん)帰国」を使ってもよい。(「凱旋」にはルビが必要)
また、「凱旋」の「凱」は明らかに「表外字」なのですが、本来表外字は使えないはずの、新聞の「テレビ欄」では「凱」は「使える」ようです。