新・ことば事情
4480「『開かれる』と『行われる』の違い」
10月9日の深夜のニュースの担当のMアナウンサー。この日行われた、
「御堂筋Kappo(カッポ)」
のニュースです。昔は「御堂筋パレード」という名前のイベントでした。その原稿の下読みを聞いていたら、
「御堂筋Kappoが開かれました」
と読んでいるので「おや?」と思いました。展覧会や音楽会(コンサート)は「開かれました」でもいいけれど、こんなふうなイベントの場合は、
「行われました」
ではないのか?と思ったのです。すぐにMアナウンサーとデスクに話をして、「行われました」で本番は読んでもらったのですが、その後、デスクのOさんが、
「『開催』とも言うので、『開かれました』でいいのでは?」
と質問してきました。私の語感ではあくまでも「行われました」なんだけどなあと思いながら、「理屈」を考えました。その中で、「これかな?」と思ったのは、
「期間が長いものは『開かれました』、1日限りのものは「行われました」ではないか?」
ということ。たしかに「万博」は半年にわたって「開かれました」し、「大阪マラソン」は1日限りなので、「行われました」になるだろうなあということで、Oデスクも納得してくれました。言葉って本当に難しいです。
これって、前にも書いてなかったっけ?
検索したら、平成ことば事情2833「入学式は開かれる?行われる?」で2007年4月8日に書いていました。その際は、NHK放送文化研究所の塩田雄大さんに「ヘルプ」をお願いして、「追記」で解説してもらっています。が、これはホームページには反映されていないな、なぜか。じゃあ、ここに載せますね。
(追記)=(2007、4、19)
NHK放送文化研究所の塩田雄大さんからメールをいただき、7年前(2000年8月1日)に、「開く?行う?」と題して「Q&A」でこれに類似したことを書いたということを教えていただきました。ありがとうございます。そこでは、
(Q)「南北首脳会談が開かれました」と「行われました」とでは、どちらがふさわしいのでしょうか。
(A)「開(ひら)く」と「行う」とは、使い分けが非常に難しいものです。どちらとも使えるがニュアンスの差が出る場合と、どちらか片方しか使えない場合とがあります。「南北首脳会談」についてはどちらも使えるのですが、「開かれました」の場合、「(これまで実施されていなかった)南北首脳会談が(やっと、ついに)実施された」というニュアンスが出ます。
【解説】
動詞「開く」について見てみましょう。「本を開く」「傘を開く」などの文で共通している事の一つに、「それまでは閉じられていた」ということがあります。このように、「開く」は「閉じられていた状態を変化させる」ところに焦点が当てられている動詞です。そこから転じて、「それまで実施されていなかったものを実施するようにする」という意味をもつようになっています。「卒業式」のように毎年定例的に実施されるものに対しては、「開かれました」とは言いにくいのです。
いっぽう「行う」は、「卒業式・討議」など、ある一定のルール・順序にのっとって実施されるものによく使われます。「南北首脳会談」もお互いに暗黙のルールに従って実施したでしょうから、「行われました」も使えます。また「展覧会」などには特にルールがないので、「行われました」よりも「開かれました」の方がふさわしい言い方になります。
なるほど!納得しました!