新・ことば事情
4442「禁煙の表示」
7月の初めに、大阪は福島の「ザ・シンフォニーホール」で豊中混声合唱団の定期演奏会を聴きました。須賀敬一先輩の振る『水のいのち』。もうお手の物。「豊混」大得意の曲ですが、今回聞いていて自然と涙が流れたのは、
「水=汚染水」
を思い浮かべたからです。そして、東日本大震災と福島第一原発の事故とその収束作業での「いのち」というものを考えながら聴いたからです。
そのステージを見つめる目をふっと横にそらした時に目に入ったのは、ステージの左右にある、
「『禁煙』の文字が白抜きで書かれた赤いランプ」
でした。もちろん、会場内は「禁煙」ですが、その赤いランプは消えたままです。わざわざ「禁煙」と表示しなくても、いまや誰もホール内はおろか会場内でも(喫煙所以外では)タバコを吸いません。しかしこのホールが建てられた1980年代前半には、ホール内に「禁煙」という大きな赤いランプが必要だったのでしょう。その「名残」として、取り外されることなく、残っているのですね。いまはホールで「禁煙」は当たり前すぎて不要なのですが。
その10日ほど後の7月18日、朝日新聞に、
「米ヒット映画消える紫煙」
という見出しの記事が載っていました。アメリカの映画に登場する喫煙シーンが、5年間で半減したことが、アメリカ疾病対策センター(CDC)の調べで分かったと。
記事によると、2005年にヒットした147本と、2010年にヒットした137本の映画で比べると、たばこや喫煙に関係するシーンの数は4152から1825へと半分以下になっているそうです。よう、そんなの数えたなあ。
また「喫煙シーン」は、青少年向け映画では2093~595に減り、成人向け映画でも2059~1226に減ったそうです。アメリカでは喫煙シーンが未成年の喫煙と相関しているとの研究報告があり、映画の喫煙シーンを減らすキャンペーンも実施されているそうです。ワシントン支局の行方史郎記者の署名記事です。
そして、8月にはNHKで「未解決事件」というドラマとドキュメントをミックスしたものを放送していました。「ミヤネ屋」のコメンテーターもしてくださっていた読売新聞の加藤譲さんが、なんと「主人公」で、「グリコ森永事件」を取り上げたものです。私が読売テレビに入社した年(1984=昭和59年)に起きた事件ですので、「かい人21面相」は、私も強烈に印象に残っている事件です。
ずっと観ていて思ったことは、再現ドラマのシーンで、
「新聞記者たちがみんな、やたらとタバコを吸っている」
ということです。これは実に印象が強かった。昔は男はみんなタバコ吸ってたんだなあと改めて感じました。今ならありえない。しかもほんとに記者が「男ばっかり」。今は女性が増えていますから、こんなふうにはならないなあ、きっと。
このドラマの「タバコ」については、かなりインパクトが強かったようで、『週刊文春』のコラムで「小林信彦さん」や(たしか)「青木るえかさん」が、私と同じような感想(やたらとみんなタバコを吸っている)を書いていました。
(追記)
9月23日、慶応義塾ワグネルソサィエティー男声合唱団の現役学生の演奏会を聴きに行ってきました。場所は大阪・茨木市民会館ユーアイホール。おそらく昭和40年代に建てられたと思われる、「よくある市民会館」。音は「デッド」に作られていて、残響はほぼありません。ワグネルの現役学生、人数が30人ほどと寂しく、この人数でこのホールはかわいそうだなと。去年、京都コンサートホールで聞いたワグネルの演奏は、同じぐらいの人数でしたが、とっても素晴らしかったのですが・・・。
それはさておき、ステージの両サイドには、「禁煙」のサインボードが。しかし、シンフォニーホールとの違いが!ここ茨木市民会館では、演奏中もその「禁煙」のボードに赤々と電気がともっていたのです!ふーん、生きているんだな、「禁煙」が。今後、ほかのホールでも注目したいと思います。