新・ことば事情
4438「海容2」
1年ほど前に(2010年)、平成ことば事情4057「ギネ・海容・Mother」で、
「海容」
について書きました。2009年に日本テレビが放送した「水曜ドラマ」のタイトルが、
『アイシテル~海容』(稲森いずみさん主演)
という、ちょっと難しい言葉だったので、それについて書きました。「海容」の意味は、
「かいよう(海容)」=(海が広くて何物でも受け入れるように)寛大な心で相手の罪やあやまちを許すこと。現代ではほとんど書簡の用語となっている。海恕(かいじょ)。」(『精選版日本国語大辞典』)
それ以来、本に「海容」が出てきました。内田樹さんが神戸女学院大学を退官される際の「最終講義」などを収録した、その名もズバリ、
『最終講義~生き延びるための六講』(技術評論社:2011、7、25)
の中にです。内田さんが講演の最後の方のコメントとして使っています。
「やめていく人間がこの場で過去にそういう罪を犯したことをここに懺悔致したわけですので、どうぞご海容願いたいと思います(笑)」(15ページ)
「これで最後なので、教壇に立って、人を扇動したり、悪い影響を与える機会のない人間の末路ということで、ご海容願いたいと思います。」(94ページ)
なるほど、こんな使い方をする言葉なのか。こういう書き言葉を使うと「賢そう」にも感じられますしね。ちょっと、マネしてみようかな。
あ、「賢い人」に「賢そう」なんて、失礼な表現でしたね。でも本の宣伝にもちょっとはなったと思うので、「ご海容」ください。