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『道浦TIME』

新・ことば事情

4436「天敵」

 

先日、「ミヤネ屋」のパネルコーナーで「便秘対策」の特集をしました。その際に、

「女性の天敵 便秘を防ぐためには」

というスーパーが出てきました。それを見て、

「ちょっと待てよ・・・」

と思いました。というのは、少し前、何の本だったかはちょっと忘れましたが、

「最近『○○の天敵』という表現をよく目にするが、この『天敵』の使い方は間違いではないか?」

という文章を読んだ覚えがあったからです。実際、辞書(『広辞苑』)を引くと、

「天敵」=「自然界で、ある生き物の捕食者・寄生者となり、それを殺したり増加を抑制したりする他の種の生物。昆虫を捕食する鳥の類」

とありました。

このときは、「いわゆる、天敵」というニュアンスにするために、

「女性の"天敵"便秘を防ぐためには」

と" "を使いました。

ところが、それから数日後、またもや「天敵」が現れたのです。夏の日焼けはシミになる、ということで、この日は「スキンケア特集」でした。そのスーパーに、

「お肌の天敵"紫外線"」

と出てきたのです。このときは"紫外線"に既に" "が使われてしまっています。そこで考えました・・・あ、そうか、この場合は本来、

「大敵」

なんだ。もしくはシンプルに「天」を取って、

「敵」

でもよい。つまり、

「お肌の大敵"紫外線"」「お肌の敵"紫外線"」

で良いではないかと思い至りました。

おそらく、「敵」だけだとインパクトが弱い感じがするので、「強調語」として「天」を付けてしまうのでしょうが、それだと本来の意味ではないということを考えないといけませんね。それにしても「天敵」は、よく出てくるなあ。きっちりした文章にとって、まさに「天敵」かもしれません。

ただ、新しい方の意味の「天敵」ですが、新しい言葉を取り入れることで知られる『三省堂国語辞典』では、2番目の意味として、

「なんとしてもさけたい、いやな相手(もの)」

という説明文が載っていました。また、『精選版日本国語大辞典』では、2番目の意味として、

「天に対する敵。神の敵」

として1591年の文献から引用していましたが、「お肌の天敵」という使われ方は載っていませんでした。

 

 

(追記)

大相撲の鳴戸親方(元第59代横綱・隆の里)が、59歳の若さで急死しました。

11月8日の朝刊各紙の記事を拾ってみると、

(毎日新聞)見出し 「じょっぱり」ウルフの天敵。

(読売新聞)見出し  千代の富士のライバル。

(産経新聞)本文    横綱同士で激闘を繰り広げた九重親方(元千代の富士)

(日経新聞)見出し   千代の富士と名勝負。

(朝日新聞)本文     ただ、当時は北の湖、千代の富士に挟まれていた。

(デイリー)見出し  デイリー・ウルフキラー

で、毎日新聞が「天敵」を使っていました。

(2011、11、14)

 

 

 

 

(2011、8、26)

2011年8月26日 17:53 | コメント (0)