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『道浦TIME』

新・ことば事情

4422「急死」

 

7月20日、元サッカー日本代表のラモス瑠偉さんの奥さん初音さん(52)が亡くなったというニュースが入りました。「急死」でした。52歳、早すぎる他界です・・・。

この「急死」ですが、

(1)   文字通り、急に死ぬこと。

(2)   闘病していたことや病状の悪化を本人や家族は知っていたが、周囲の人たちは知らなかった。急に訃報を聞いた場合。

2つのケースが考えられるのではないでしょうか。

本来の意味は(1)だと思われますが、「訃報」が「突然」の場合に、私たち第三者は「急死」だと感じます。

辞書を引いて見ましょう。

『精選版日本国語大辞典』=とつぜん死ぬこと。頓死。急逝。

『デジタル大辞泉』=急に死ぬこと。急逝。頓死(とんし)。

『新潮現代国語辞典』=急に死ぬこと。急逝。頓死(とんし)。

『新選国語辞典』=とつぜん死ぬこと。急逝(きゅうせい)。

『明鏡国語辞典』=突然死ぬこと。

『広辞苑』=突然死ぬこと。急逝。頓死。

と、ほぼ同じ内容で、全部(1)の意味ですね。

これに対して『新明解国語辞典』は、2つの意味を載せています

「①短期間わずらって死ぬこと。②思いがけない事故に会って死ぬこと。」

つまり、「死因」が、①病気、②事故の2種類に分けられています。「事故」で死ぬ場合は多くの場合「急死」に繋がりますね。ただ文字が、

「事故にって」

となっていますが、普通は、

「事故にって」

ではないのかな?

『岩波国語辞典』は、「急死」の対象を「動物」にまで広げています。

「丈夫でいた人(動物)が、急に死ぬこと。」

動物に「急死」という表現を使ってよいとする立場ですね。「死亡」と言う言葉についてははどうでしょうね?動物に使ってもいいのかな?『岩波国語』は?

「死亡」=人が死ぬこと。

あ、こちらはやはり「動物」は認めていないのですね。それと「丈夫ではない人」は「急死はしない」のでしょうか?少し疑問が残ります。

「元気だった人(動物)が」

とした方がよいのではないでしょうか?「丈夫ではない人」でも「元気」なときはありますからね。

『三省堂国語辞典』は、「新解さん」並みに「死因となった病名」にまで踏み込んでいます。

「心臓まひ・脳出血などの急な病気のために、みじかい時間のうちに死ぬこと」

話が少し飛びますが、「死因」というのは、私はすごくいい加減なものだと感じています。なぜなら、直接の死因は誰でも、

「呼吸停止」「心臓停止」

によるわけです。だからそれを「死因」と言うのは、

「言っても言わなくても同じ」

だと思うのです。どちらかと言うと、「間接的な死因」が知りたいなと思うことが多いように感じます。

それはさておき、『三国』(=『三省堂国語辞典』の略称・愛称)は果敢に「急死」の語釈に斬り込んでいるなという感じはしますね。

 

『語感の辞典』も引いて見ました。

 

「急に死ぬ意で、会話にも文章にも使われる漢語。(例)<交通事故による急死><心臓発作で急死する>*「即死」はもちろん「頓死(とんし)」と比べても、そこまで急激な死という感じはない。」

 

ということで、いくつかの辞典が載せている「頓死」とはニュアンスが違うと明記しています。

でも、私が2番目に挙げた意味、

「(2)闘病していたことや病状の悪化を本人や家族は知っていたが、周囲の人たちは知らなかった。急に訃報を聞いた場合。」

という意味を書いた辞書は、調べた限りではないですね。

まだ辞書が認めた用法ではないということですが、検討の余地があるのではないでしょうか。

 

(2011、7、25)

2011年7月29日 09:52 | コメント (0)