新・ことば事情
4420「自撮り」
2011年7月24日、フジテレビのサッカー番組に「なでしこジャパン」の面々7人が生出演していました。その際に、ブログに自分の写真をよくアップしているという丸山桂里奈選手が放った言葉に、
「ジドリ」
というのがありました。え?ジドリ・・・・地鳥?焼鳥?と一瞬思いましたが、話の流れから、これは、
「自撮り」
であろうと推測しました。と言うのも、ブログに自分の写真を載せるということは、その写真は誰が撮るかというと、
「自分で(自分を)撮る」
という結論になるからです。しかもその発言を受けて、ほかの選手も「ジドリ」という言葉を使っていましたから、少なくとも「なでしこジャパン」のチーム内では「普通の言葉」として使われているのでしょう。
報道記者や刑事さんなどが「ジドリ」と聞くと、
「地取り」
つまり、容疑者や被害者の周辺で聞き込みをして、その地域の証言を固めることを言いますが、まさか「なでしこ」にそれは関係ないでしょうからね。(辞書を引くと、そのほか「囲碁用語」やら「相撲用語」、そして文字通り地面を取る「建設関係の用語」でも「地取り」がありました。)
Google検索してみると(7月25日)、
「自撮り」=171万件
ええっ!そんなにあるの!?
「AKB48自撮り神決定戦」「自撮り画像掲示板」「お外で自撮り」
など、ネット上は「自撮り」であふれています・・・!
自分で自分の写真を撮るなんてことは、これまでのカメラでは「セルフタイマー」を使うかどうかしないと無理だったわけで、技術的には「ケータイ」のカメラの普及によって生まれたものでしょう。そして技術的に可能でも、自分で自分の写真を撮るなんて、よっぽどのナルシストでもなければしなかったと思うのですが、今は、
「ブログに載せる」
という目的においては、それほどナルシストでなくても、自分で自分の写真を撮る(記録する)という行為は普遍的になっているのではないでしょうか。
報道の学生アルバイトの男の子に「ジドリって知ってる?」聞くと、
「5、6年前には使われてましたけど、最近はあまり聞かないっす。だって、自分で自分の写真を撮るのって、恥ずかしいじゃないですか!」
とのこと。また最近「ミヤネ屋」に入ったADの若い女の子に「ジドリって知ってる?」と聞くと、
「もちろん、知ってます。焼鳥で食べる、宮崎地鶏、おいしいですよね」
と言うので、
「違うよ、ケータイのカメラで自分の写真を撮ることだよ。"地鶏"を答えるなんて"オッサン"入ってるな!」
と答えると、
「ああ、そのジドリ、知ってます。でも私、宮崎出身なんで、ジドリと聞くと地鶏がまず思い浮かんだんです」
「ジドリ」には「年齢差」と「地域差」があるようです。