新・ことば事情
4414「イクジイ」
2011年7月13日の朝日新聞に、
「頼もしいイクジイ」
という見出しが。「イクジイ」とはお察しの通り、
「定年後、地域の子育てに積極的にかかわる高齢の男性」
のことを言うようです。育児に積極的な男性(父親)を「イクメン」と呼ぶのにならって、「イクジイ」と名付けたNPOもあるとのこと。チラチラ耳にする言葉です。
「育児」+「爺」=「イクジイ」
ということですね。
「イクジイ」は、周りの助けのいない「孤育て」家庭や、仕事で忙しい現役世代を支える頼もしい存在になっているそうです。
『現代用語の基礎知識2011』を引きましたが、「イクメン」は載っていましたが、「イクジイ」は載っていませんでした。
Google検索では(7月25日)、
「イクメン」=285万件
「イクジイ」=8840件
でした。また「ィ」が小さい「イクジィ」は、
「イクジィ」=9970件
で、「イクジイ」より多かった。これはつまり「育児」のことなのかな?長野県の松本市に、
「月刊イクジィ」
って雑誌があるみたいですね。「爺」を追加して検索してみたら、
「イクジイ・爺」=278件
やはりまだ少ない。
「育爺」 =2140件
「イク爺」=4300件
「育ジイ」= 311件
ということで、表記はまだ統一されていない感じですね。ばらつきがあります。全部カタカナの「イクメン」に揃えて「イクジイ」がややリード。でも「イク爺」も頑張っているようです。我が家も「イクジイ」にはお世話になっています。
あ、おばあさんは、「イクバア」と言うのかな?
「イクバア」=220件
「いないいないばあ」みたい。居ない居ない婆?・・・「イナバウアー」にも似ています。懐かしい。一応「イクジイ」と対で「イクバア」もあるようです。
「イクジイ・イクバア」=192件
「育婆」=3120件
「イク婆」=129件
「育バア」=22件
と、ここまで調べて書いてなんですが・・・・私「イクメン」については「平成ことば事情」では書いてないと思うのですが、「イクジイ」いや「育爺」については以前、書いておりました!・・・トホホ。
平成ことば事情903「育爺」です。書いたのはなんと9年前!2002年10月31日。その頃に、「育爺」は既に登場していたのですね!
そのまま転載します。
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◆ことばの話903「育爺」
(2002年)10月23日の日経新聞夕刊を読んでいたら、「生活」欄でこんな記事を見つけました。
「われら"育爺"リタイアしたら孫育て」
ホオ、"育爺"。初めて目にしました。記事を読んでみると、
「定年後、働く娘の育児を手伝う男性が目立ち始めた。孫の保育園のお迎えやベビーシッター役を担い、家族の中に仕事に変わる生きがいを見出しつつあるようだ。"塩爺(しおじい)"ならぬ"育爺"たちの奮戦ぶりを追った」
とあります。記事の中に出てくる、中空瑞(みずき)ちゃんの祖父・喜彦さん(66)は、自らを「保育士」ならぬ「保爺」(ほじい・・・ですかね?)と読んでいるそうで、一年間の育児記録を本にまとめてこの夏、自費出版したほどだというからスゴイものです。喜彦さんは、「単なる守り役ではなく、人間を育てているとの自負がある」んだそうです。恐れ入りました。
記事のもう一つの見出しは、
「『働く娘を助けたい』家庭で役割、生きがいに」
です。この「育爺」という言葉は、この記事を書いた記者の造語なのでしょうかね?辞書には載ってないよな。またインターネット検索をしてみましょう。
Googleで・・・「11件」出てきましたが、そのうち「7件」は中国語のホームページ。日本語のものは「4件」で、そのうち「2件」はこの日経の記事関連なので、独自に「育爺」を使っている例は日経以外には「2件だけ」でした。ということは、マスコミ的には日経の「造語」「新語」と言ってもいいのではないでしょうか。
塩川財務大臣を"塩爺"と呼んだのは、元々は宮崎駿監督のアニメ映画「千と千尋の神隠し」に出てくる「釜爺(かまじい)」を倣ったのでしょうが、その影響がこんなところまで・・・と見る事が出来るでしょう。
実際、うちの父も、時々孫の保育園の送り迎えをやってくれます。もちろんそれだけが楽しみという訳ではないのですが。
「育爺」、今後増えるかもしれませんね。
その点、おばあさんははい間々でもそうやって着たのに、全然取り上げられないので、ちょっと不公平かな?でも「育婆」なんて、あまり響きが良くないですよね。
いない、いない、婆。
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「いないいないばあ」って、9年前もおんなじ「オヤジギャグ」を言ってるよお・・・進歩してねえなー!
でも、9年前は「育爺」は実質「4件」しかなかったのに、現在は「2140件」ですから、「育爺」の方は進歩しているようですね。しかもカタカナの「イクジイ」になってるし。表記は「育爺」→「イクジイ」という流れのようです。