新・ことば事情
4398「『上から目線』と言う人」
松本龍復興担当大臣が辞任しました。被災地・宮城県や岩手県での発言やその後の発言が、
「上から目線だ!」
と顰蹙を買ったことが、直接の原因と考えていいでしょう。
それはそれとして(それに対する批判はもう出尽くしているでしょうから、いまさら書きません)、今回もよく出てきた「上から目線」という言葉です。
偉そうな発言があったとき、それに対して「『上から目線』だ」という言い方はここ数年の流行り言葉だと思いますが、あまり気持ちのいい言葉ではありません。そこでふと気付きました。
「人に対して『「上から目線」だ』という人こそ、『上から目線』ではないか」
ということです。「上」とか「下」とかいうのは「立場」を表します。その立場にある人が、
「上→下」
に言葉を言うと、当然「上から目線の言葉」になるでしょうが、それに対していちいち文句を言っていては、そもそもの「立場」が必要なのか?ということになってしまいかねません。それにもかかわらず「上から目線」が批判を受けるのは、
(1) 本来「同等」あるいは「下」の立場にいる人が、「上」の人に「上から」の発言をした場合。
(2) 「上」の立場の人であるが、必要以上に「上」を強調した物言いをした場合。
ではないでしょうか。
今回の松本大臣の場合、(2)のようにも感じますが、「知事」と「大臣」は対等な立場であると考えるかどうかの考え方の違い、「被災地の人たちに寄り添う」と言いながら、被災者でもあり被災地の人たちの代表である知事への配慮が足りない(あるいはない)点で、「上から目線」と感じられたのではないか。
そう考えると、先ほどの発言をちょっと修正します。その人がどういう立場にあっても、
「人に対して『「上から目線」だ』という人は、『対等の物言い』を求める人である」
ということではないでしょうか。
こんな言い方、批判の言葉が出てくるのは、「対等の立場での発言」を求める人が増えていること、しかしながら現実は、そうなっていないことのギャップによるのではないでしょうかね。