新・読書日記 2011_129
『しあわせ節電』(鈴木孝夫、文藝春秋:2011、6、10)
鈴木孝夫先生といえば、言語社会学(社会言語学じゃないんだ!)の権威。御年84歳。カクシャクとしていらっしゃる(と思う)。岩波新書の『日本語と外国語』を始めとして数々の名著をものしているのはご存じのとおり。え?知らない?ぜひ読んでください。私も感銘を受けて、インタビュー取材を申し込んだことがある。(断られましたが。)
その鈴木先生が、「節電」「省エネ生活」を何十年も続けてらっしゃるとは知らなかった。やさしい語り口で読みやすい本書は、地震による原発事故によって引き起こされた「計画節電」を機に、これまでの生活・生き方を見直そうという提案の書。やさしい語り口だが、怒るとコワイ先生の一面を垣間見ることができるのも、本書の楽しみの一つ。全部で120ページほどという短さで、大変読みやすい。以下の部分は、私も共感した部分である。
「これまでの進歩を支えてきた効率優先という流れが必然として破綻を招くのならば、我々は何をすべきなのか。私は社会の変化の速度を少し遅くしてみる必要があると思うのです。」(27ページ)
「今、年寄りや長老に権威はほとんどありません。邪魔者扱いです。むしろそれを揶揄し、馬鹿にすることも普通になってきました。その理由、原因は、あまりに広汎になり発展しすぎた経済活動にあるのです。しかも変化の速度が極端に速くなっているため、年長者が知っていること、彼らの経験が必ずしも若者たちの役に立たないことが増えているからです。(中略)しかし、今回のような人智をはるかに超えた天変地異の結果、大きな意味で人間や地球のあり方を考え直すということになってくると、やはり百年前や五十年前を知っている年寄りや古老の話を聞く必要が出てくるのです。」(113~114ページ)