新・読書日記 2011_134
『接客主義』(松尾貴史、光文社知恵の森文庫:2004、3、15)
雑誌『BRIO』に2002年4月から2003年6月に連載されていたもの。
連載から時間が経って文庫本化され、さらに本が出てからずいぶん経って読むと、
「ああ、たしかにそういう時代があったな・・・」
と、ほんの数年でも「ときの流れ」というものを感じることができる。
著者の松尾さんは「ミヤネ屋」の火曜日レギュラー・パネリストでもあり、普段スタジオでの発言にも接しているが、その知識は、こういった実際の取材に基づくものであるのだなと、改めて感じる。
それにしても『BRIO』という雑誌(の担当者)・・・というか松尾さんの好みなのか、ふだん我々がなかなか行かないようなお店の選択が多く、興味深い。その取材内容、が文章とイラスト・写真を通して「時代」を浮かび上がらせるとともに、「接客=サービス」というものの実体、どうあるべきかという姿も浮かび上がってくる一冊である。
中で、「おや?」と思ったのは、「敷居が高い」という言葉。本来は、
「何か不義理をしたために、再び訪れにくい」
というものだったが、最近は「値段が高い」「趣味が違い」など、「不義理」以外の理由で訪れにくい、しかも「再訪」ではなく「一度も訪れていない場合」に使われることが増えているが、松尾さんも「(一般の人が)初めて訪れる」ケースとして「敷居が高い」を使っているように見えた。以下の箇所である。(「弁護士事務所」について)
「ひとたび相談に訪れようものなら、話を聞いてもらうだけでいくらとられるか分かったものではないという『白い巨塔』のかたせ梨乃状態になる恐怖心も根強い。つまりは、弁護士事務所というとこれは、なかなか『敷居が高い』場所なのである。」(226ページ)
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