新・読書日記 2011_111
『私家版 差別語辞典』(上原善広、新潮選書:2011、5、25)
著者は、1973年生まれ。『日本の路地を旅する』で2010年大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞したそうだ。
本書を読めば分かるが「路地」というのは、著者による「被差別部落」の「文学的表現」だそうだ。中上健次も「路地」という表現を使っていたそうだが、これはやはり慣れないと違和感があり、読み飛ばしてしまいそうだ。
「辞典」とタイトルに付いているが、もちろんいわゆる「辞典」のような本ではない。
著者自身、"路地"に出自を持ち、「そもそも差別とは何なのか?」ということを言葉の側面から探究している。しかし、やはり1973年生まれと若いこともあって、本当に厳しい差別があった時代は既に過ぎてしまっていたように感じる。それでも、潜行した「差別」の実態こそ、「ルポ」の手法で地道に明かしていかないといけないテーマなのかもしれない。
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