新・ことば事情
4372「夏場のハマグリ」
5月25日の産経新聞に、
「客足◎ 購買客△」
という見出しが出ていました。5月に装いも新たに全面開業したJR大阪駅の南北の駅ビルに新規開業した3つの商業施設で、「来店客」は目標を大きく上回ったものの、実際に買い物をした割合を示す「買い上げ率」が各施設とも20%台と、想定を下回っていることが分かったという記事です。
それを見て私の頭に思い浮かべた言葉が、
「夏場のハマグリ」
でした。ご存じですか?「大阪のしゃれ言葉」です。意味は・・・・一緒に考えましょう。
「夏場」は「暑い」。その暑い時期の「ハマグリ=生もの」は「腐りやすい」ですよね。でも、腐るのは中の「身」だけで、外の「貝殻」はもちろん腐らない。ということで、もうお分かりですね。え?まだ分からない?では、どういう状況使われるかをご説明します。店主と知り合いの会話。
「どや?もうかってまっか?」
「いやあ、あかんあかん、全然や」
「そいでも結構、お客さん、入ってるやないか」
「いやあ、もう『夏場のハマグリ』ばっかりや」
別にこのお店は「魚屋さん」ではありません。
そう、さっきの解説にあった内容を照らし合わせると、そこから導き出されるのは・・・
「ハマグリの身は腐るが、貝殻は腐らない」
つまり、
「み(身→見)ィくさって、かい(貝→買い)くさらん」
というちょっとお下品な感じの言葉。
「見るだけで買わない」
という客のことを言っていたのです。お客さんには意味が分からないように言うという意味では「隠語」でもありますね。
JR大阪駅の商業施設を訪れたお客さんは、まさに、「見るだけで買わない人が多い」という話でした。