新・読書日記
2011_123
『死ぬ気まんまん』(佐野洋子、光文社:2011、6、18)
この「吹っ切れた感」は、ガンで「余命2年」と宣言されたからでなく、生まれ持ったものであろう。いや生まれながらではなく、7人兄弟でありながら、幼い時に兄や弟を亡くすという経験をしたこととによって培われた「死生観」によるものかもしれない。
もう少し長生きしてほしかった・・・。
ただ、僕が佐野洋子を読み始めたのは、彼女が死んでからだ。「死」がきっかけである。
冒頭の文章といい、「山本夏彦に似ている」と思った。変人、頑固、でも憎めないところに魅力があるのだと感じた。
ちなみに「死ぬ気まんまん」という言葉は、佐野の長男が、余命2年と宣言された母の様子を見て「『死ぬ気まんまん』なんですよねえ」と言ったのを受けてのものだそうだ。
star4
(2011、6、25読了)
2011年6月30日 12:05
| コメント (0)
新・読書日記
2011_122
『ぼくのワイン・ストーリー~ベストセレクション142種』(羽仁進、中公文庫:1997、5、18)
単行本が出たのは1991年。文庫本を買ったのは、最初に私がワインにはまった頃。実にもう14年も前になるのだなあ。その間、「積んどく」になっていたものを、なんでだか読み始めてしまった。こういう本は、昼間はなかなか読めなくて、夜まさに「ワインを飲みながら読む」という形だったので、一気に読むのではなく、チビチビと2~3週間ぐらいかけて読んだ。
概ね、同感でした。ここに出ている当時の値段ぐらいに、今は落ち着いてきてる感じがしました。
star3_half
(2011、6、24読了)
2011年6月29日 18:39
| コメント (0)
新・読書日記
2011_121
『校長先生たちからの心揺さぶるメッセージ~これからを生きる君たちへ』(新潮社:2011、4、26)
東日本大震災の被災地の小中学校の校長先生から東京の大学の学長(総長)まで、今年の卒業式での祝辞を集めたもの。予定通り3月に卒業式を迎えることができたところはほとんどなく、4月に入ってからというところもあるし、児童・生徒が犠牲になった学校も、もちろんある。全員が参加できなくなった卒業式。非常時のいま送り出す子供たちへのはなむけの言葉だけに、形式どおりの言葉ではなく「魂からの言葉」となって、子どもたちの心にも届いたことであろう。
star3_half
(2011、6、22<夏至の夜>読了)
2011年6月29日 12:36
| コメント (0)
新・読書日記
2011_117
『僕が大人になったら』(佐渡裕、PHP文庫:2011、6、17)
指揮者・佐渡裕が、『月刊CDジャーナル』で1997年から2000年12月まで4年間連載したエッセイをまとめたもの。小学生の時に文集に書いた「ベルリンフィルで指揮をする」を、ついにこの5月に達成した佐渡さん。同い年だけど、ずっと年上に見える。エネルギッシュだけど、年よりはずっと老けて見えるよね。
star4
(2011、6、19読了)
2011年6月28日 18:09
| コメント (0)
新・読書日記
2011_120
『日本語必笑講座』(清水義範、講談社文庫:2003、11、15第1刷・2005、4、20第6刷)
清水義範さんの言葉の本だからおもしろいに決まってる。
でも、文庫本で出たのが2003年、単行本はもっと前だから、その分「あ、古いな」というか、もう馴染んでしまっている(もしくは「死語」になってしまっている)言葉の話もいくつかあった。
「10年ほどで、言葉も時代も変わるのだなあ」
ということを"再確認"できる本だった。
2003年といえば、私の初めての本『「ことばの雑学」放送局』(PHP文庫)が出た年である。「ああ、私の本も古くなっているのかな」とも思う。絶版になっているのだから当然か。我が家にはあと200冊ぐらい、在庫がございます。
star4
(2011、6、22<夏至の夜>読了)
2011年6月28日 12:18
| コメント (0)
新・読書日記
2011_118
『案外、知らずに歌ってた童謡の謎』(合田道人、祥伝社黄金文庫:2003、10、30)
ずいぶん前に勝手読みかけて、ほったらかしになっていた。
かなりおもしろい。でも、知っている話もずいぶんあった。
いろいろと調べた上に、著者の「推測」も「創作」されている。その部分が"独自性"にあたるが、そこは「史料」としては使えない。でも話のネタにはなる。
「赤い靴はいてた女の子」の話や、「しゃぼん玉」の野口雨情の娘の話、通説とは違った部分がおもしろかった。
star3_half
(2011、6、21読了)
2011年6月27日 12:09
| コメント (0)
新・読書日記
2011_116
『携帯の無い青春』酒井順子、幻冬舎文庫:2011、6、10)
うーん、いつの間に酒井さんはこんなにいっぱいエッセイを書いているのだろう?次から次に本が出ている気がする。まあ、それがお仕事だから当たり前と言えば当たり前なのだが・・・。今回、これを読んで「あ!」と思ったのは、
「ガーリ-」
という言葉が雑誌「オリーブ」によって生まれたというあたり。「普通のことば」として「ガーリー」が使われていた。私にとっての「ガーリー」は、元サッカー・イングランド代表で名古屋グランパスにも来たWカップの得点王「ガーリー・リネカー」しかいないのだが。平成ことば事情4035「ガーリーな生活」で書くまで気付かなかった言葉です。
しかしこの本では、
「『オリーブ』という雑誌の、役割。それは「ガーリー」という概念を、世の中に認識させたことでしょう。ひな菊の花束、ガラスの小瓶、刺繍のハンカチ、シルクのリボン...。オリーブの洗礼を受けた私達は、すでに少女ではなくなった今も、どこかでガーリーさに対する愛着を抱きながら、生活を送っているのです。」(66ページ「オリーブ」)
「すでにオリーブが休刊となってしまった現在も、ガーリーなファッションや雑貨は人気がありますが、その主体となっているのは、実は少女ではなく大人です。本物の少女は『ガール風』になどしなくとも、十分に少女。宝塚の男役が必要以上に男らしく振る舞うように、既に少女ではない大人の女性は、少女以上にガーリーにこだわるのでした。」
「私達のガーリー好きは、きっとこの先も治らないだろう。が、せめて"白髪混じりの三つ編み"だけは絶対にやめよう!」
これはある種、女性の"ピーターパン症候群"では?幼児性の名残、しっぽではないか。
そして、酒井さんといえば「○○っぷり」。今回も「ミニっぷり」「興隆っぷり」が出てきました。
「ピンク・レディーの衣装は超ミニのワンピースであったわけですが、そのミニっぷりよりも、小林カツ代のエプロンのようなワンショルダーのストラップに、わたしはドキドキ感を覚えていました。」(16ページ)
「今や、大学によさこいソーランサークルがあるほどの興隆っぷりを見せているあの踊りが、これほどまでに全国に広まった理由は、やはり日本人の土俗的心理、つまりはヤンキー心を刺激する作りになっているからでしょう。」(74ページ)
堂々とした「使いっぷり」です。また、
「客席にいるのは、うっすらと中年がかった人達です。」(22ページ)
うーん、このあたり、うちの妻に言わせると「底意地の悪さを感じる」そうですが、そこが人間としての酒井さんの文章の魅力だと思います。自分も含め客観的に見ているところが。
star4
(2011、6、18読了)
2011年6月26日 17:05
| コメント (0)
新・読書日記
2011_115
『働かないアリに意義がある』(長谷川英祐、メディアファクトリー新書:2010、12、31)
よく「アリのうち、よく働いているのは2割で、残りの8割はあまり働いていない。その2割の"よく働くアリだけ"を集めたら、全部働くかと思ったら、やはりその中で働くのは2割だけ」というようなことを耳にする。それを人間社会に勝手に当てはめて「本当かな?」と思いつつも、幾分、思い当たるフシはなきにしも非ず。「でも2割ということはないだろう、7割ぐらいのアリは働いているのでは?」と思っていたが、この本によると、なんと、
「7割のアリは巣の中で休んでいる」
これを「不思議に休憩のアリ巣」と言う・・・とは書いてない。ゴメンナサイ、今急に思いついたので書きました。悪気はなかったので許してやってください。
更に驚いたのは、
「生まれてから死ぬまでほとんど働かないアリもいる」
ということ!あ・・・でも・・・人間でもそうかもしれないか。
「フリーライダーが増えるとその巣は滅びる」
ああ、やっぱり。「滅私奉公」は進化の過程でもあると。人間様はアリに負けてはならないと思う。アリ様のつもり?
star3_half
(2011、6、16読了)
2011年6月26日 12:04
| コメント (0)
新・読書日記
2011_114
『局アナ』(安住紳一郎、小学館:2006、4、10)
古本屋さんに古本を売りに行って、待っている間に見つけて買ってしまいました。
2002年11月~2005年6月まで、『テレパルエフ』(小学館)というテレビ雑誌に連載していたコラムをまとめたもの、のようだ。
羽鳥アナウンサーが「フリー」になったいまや、日本の「男性局アナ」の中で「最も人気のある」「最もフリーに近い」アナウンサーとされる安住アナ。しかし実は私は、あまり彼の番組を見たこともないし、よく知らなかった。そこで、「どんな人なのかな?」という興味もあって読んでみた。なかなか"おもしろそうな"性格の人のようである。少し屈折しているようにも思えるが・・・単純ではないところがおもしろいのかな?
本書によると、2006年2月当時、民放局アナが全国で1635人、NHK501人の計2136人。(「テレパルエフ」編集部しらべ。局によってはキャスター含む)も、「局アナ」という職種の人はいるそうだ。「多い」と言えば多いし、「少ない」と言えば少ない・・・ですね。
star3
(2011、6、14読了)
2011年6月24日 18:26
| コメント (0)
新・読書日記
2011_113
『バーンスタイン名盤100選』(佐渡裕・高橋敏郎、新潮社とんぼの本:2008、9、25)
1ページの3分の2は、バーンスタインの「レコードジャケットの写真」。見ているだけで楽しい。文章は、佐渡さんが書いているのか高橋さんが書いているのかがわからないので、最後まで戸惑う。もしかしたら、二人が書いているのは署名コラムだけで、レコードジャケットの解説は全く別人かも。そのあたりが明らかでないのは不親切。その意味では消化不良の一冊だが、ここに出ているレコードやCD、全部聴きたくなってきた。
star3_half
(2011、6、20読了)
2011年6月23日 12:04
| コメント (0)
新・読書日記
2011_111
『私家版 差別語辞典』(上原善広、新潮選書:2011、5、25)
著者は、1973年生まれ。『日本の路地を旅する』で2010年大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞したそうだ。
本書を読めば分かるが「路地」というのは、著者による「被差別部落」の「文学的表現」だそうだ。中上健次も「路地」という表現を使っていたそうだが、これはやはり慣れないと違和感があり、読み飛ばしてしまいそうだ。
「辞典」とタイトルに付いているが、もちろんいわゆる「辞典」のような本ではない。
著者自身、"路地"に出自を持ち、「そもそも差別とは何なのか?」ということを言葉の側面から探究している。しかし、やはり1973年生まれと若いこともあって、本当に厳しい差別があった時代は既に過ぎてしまっていたように感じる。それでも、潜行した「差別」の実態こそ、「ルポ」の手法で地道に明かしていかないといけないテーマなのかもしれない。
star4
(2011、6、10読了)
2011年6月22日 11:59
| コメント (0)
新・読書日記
2011_110
『大学の下流化』(竹内洋、NTT出版:2011、4、19)
タイトルが気になって、書評を読んで購入。最初のところで「大学の下流化」について書かれていてフムフムと読んでいたのだが、途中(46ページ以降)からおかしくなった。読書日記や書評(それもまとまりのない)が入ってきて、「大学の下流化」の話は「え?最初だけ?」という感じ。あれ?なんだこれ、これまでに書いた雑文を集めただけではないか?ちょっと「騙された感」があった。
途中から、その「書評」というか「読書日記」がちょっとおもしろくなってきた。「合コンと合ハイ」などを含んだ「第6章ニッポン社会考」はなかなかおもしろかった。ということで、真ん中はちょっと「キセル」してる感じですね、この本は装丁はオシャレです。
star3_half
(2011、6、13読了)
2011年6月18日 10:30
| コメント (0)
新・読書日記
2011_109
『気になる日本語~本音を申せば』(小林信彦、文藝春秋:2011、5、15)
小林信彦の2010年に「週刊文春」で発表されたコラムをまとめたもの。全部既に読んでいるので、特に目新しい感じはない。高島俊男さんの「コラムまとめ単行本」のように「あとからひとこと」を入れてくれると、わざわざ単行本を買う価値が上がると思うのだが。
2010年は7回にわたって「気になる日本語」を取り上げていたので、それがタイトルになっているが、週刊誌でのタイトルは「本音を申せば」。「気になる日本語」の筆頭は「悩ましい」の用法について。これ、気になりだすと本当に"悩ましい"んですよねえ。でも本当に「語感」というものはなかなか厄介で、人それぞれの部分があるので。単行本でも直っていなかったが、牧村史陽の本のタイトルは「大阪方言事典」ではなく「大阪ことば事典」だと思うが、いかが?
ともかく、ここに出てくる本や映画の話を読んでいると、「見たいなあ」と思う。イーストウッドで見ていないのもあるので、DVD借りてきて見ようっと。
star4
(2011、6、13読了)
2011年6月17日 18:29
| コメント (0)
新・読書日記
2011_108
『語感トレーニング~日本語のセンスをみがく55題』(中村明、岩波新書:2011、4、20)
昨年、著者は岩波から『日本語語感の辞典』という辞書を出した。おそらく、その編纂の過程で出てきた様々な疑問や問題点などで辞書には盛り込めなかったものを、この「新書」にまとめたのだろうと思ったら、「あとがき」を読むと、やっぱりそういうことだったみたい。クイズ形式にしたことで、読みやすくなった。55問もあるので、ちょっとへばり気味にはなりましたが、勉強になりました。大体、私の語感と著者の語感は一致していたが、これ、若い人にやらせたらなかなか難しいのではないか。また、外国人にはちんぷんかんぷんかもしれない。
それにしても日本語というのは、一つの言葉に様々な表現があって、その微妙なニュアンスの違いが、話し手と相手の関係性を表すだなあと、改めて感心する一冊。
star4
(2011、6、8読了)
2011年6月17日 12:27
| コメント (0)
新・読書日記
2011_107
『松本あゆ美のNHK講座~全国か日本語を集めちゃいました!』(「みんなでニホンGO!」制作班、祥伝社:2010、8、5)
去年放送されたNHKの番組『みんなでニホンGO!』の中でアシスタントをしていた、松本あゆ美さんが担当していたミニコーナーを本にしたもの。ま、ひとことで言うと、『VOW』ですね。「町で見かけたおかしな看板」の写真を集めたものです。
それだけで私の場合「買い」となるわけですが、ちょっと買うのを躊躇したのは、まるで「アイドル本」のように、どのページにも松本あゆ美さんのカラー写真が出てくるのです。これがまた、かわいい!
でも、「それ目当てで買ったおっさん」と思われるのはシャクなので、買うのには少し勇気が要った、というわけです。
この本をカバーなしで電車の中で読むのも、この年になると勇気が要ります。マンガ本は読めるんだけどな。
star3_half
(2010、6、2読了)
2011年6月13日 19:24
| コメント (0)
新・読書日記
2011_106
『新装版・食卓にあがった放射能』(高木仁三郎・渡辺美紀子、七つ森書館:2011、4、26)
チェルノブイリ原発事故の後の1990年に出された本が、「フクシマ」のあとに「新装版」として出た。既に著者の高木仁三郎氏は、この世にない。
セシウムの問題は、当時も問題になっていた。
当時の「暫定基準」は、370ベクレル/kgだったようだ。今は、牛乳・乳製品などは200ベクレル/Kg、それ以外の野菜などは500ベクレル/kgである。「暫定」の基準は、いつ上がった(一部下がった)のだろう?
そして「正しい情報の伝達」ということが重要であることは20年前から変わっていないことも確認した。
star3
(2011、6、7読了)
2011年6月 9日 18:24
| コメント (0)
新・読書日記
2011_105
『原発大崩壊!~第2のフクシマは日本中にある』(武田邦彦、ベスト新書:2011、5、24第1刷・2011、6、5第3刷)
武田先生の本、以前読んだときは「ちょっとマユツバ」的に思っていたが、震災・原発事故以来、とても信頼が置けるように思える。
武田先生は「安全な原発を推進する」という立場、すなわち「安全でない原発は推進しない」というスタンスを一貫して取っている。そして「そもそも、日本のように地震の多い国に建てられた原発は、安全ではない」ことを前提に、「万が一、事故が起こった場合に、周辺住民がどうやって避難するか」をまず考えるべきだという主張は、大いにうなずける。そして我が国の原発は「万が一の場合、どうやって"原子炉"を守るか」を第一に考えてきて、周辺住民のことは考えていなかったという指摘も鋭い。「安全神話」を盾に、対策を講じなかったのだ。「飛行機はめったに落ちない安全な乗り物。でも万が一の場合、落ちることもある。だから、もしもに備えて、酸素マスクや救命胴着の説明をする」のが「当然」だとすれば、「原発」も同様の備えをするべきだという主張、ごもっともです。
star3_half
(2011、6、7読了)
2011年6月 9日 12:31
| コメント (0)
新・読書日記
2011_103
『うまく話せなくても生きていく方法~「口ベタ」は悪くない』(梶原しげる、PHP新書:2011、5、6第1刷)
結構、難しいところをターゲットにした「話し方の本」だなあ、と感じた。
と言うのも、世の中に数多くいるであろう「口ベタの人」をターゲットにしたのはいいけれど、その解決策として「うまく話せなくてもいいんだよ」と「そのまま」を認める姿勢を打ち出したことで、「話し方の本」ではなくなってしまっている。カウンセリングの本。でも、時々「ちょっと勇気を出して、話すきっかけを作ってみたら」という"誘い水"を向けている感じだ。
「そのままでいい」と肯定すると、言われた本人は安心するかもしれないが、世の中はそれほど受け入れてくれないという現実がある。その中で、自分の気持ちだけ「そのままでいいんだよ」と心の安定を得ても結局、外の世界とのズレた感じを強く覚えてしまうのではないか?うーん、誰にでも均等に効くレシピはないのだよなあ、きっと。難しい。
star3_half
(2011、6、4読了)
2011年6月 8日 12:23
| コメント (0)
新・読書日記
2011_102
『日本の珍地名』(竹内正浩、文春新書:2009、8、20第1刷)
単に「珍地名」というよりは、「平成の大合併」によって生まれた「新しい地名の裏側」を読み解く、といった感じの一冊。
昭和の時代には4つしかなかったのに、今回の大合併で一気に増えた「ひらがな市町村名」だが、それらは「奇を衒ったもの」ばかりではなく、その裏側にはやむにやまれず「ひらがな」を選択するしかなかったというような事情があったり、せっかく住民投票で名前を決めたのに、その結果が反映されなかった地名など、「名前」の裏側に隠されたそれぞれの「合併事情」が浮かび上がる。異なる町が一つになることの難しさがよ~くわかる一冊。
これを読んで思ったのは、合併が一段落した今こそ、「合併の功罪」を検証すべきではないかということ。それなくして、「道州制」なんて「理想」を語っても仕方がないのではないかと思った。「平成の大合併」は「壮大な実験」であったのだから、実験結果を検証しない手はない。
star3_half
(2011、6、4読了)
2011年6月 7日 18:40
| コメント (0)
新・読書日記
2011_100
『震災列島』(石黒耀、講談社文庫:2010、1、15第1刷・2011、5、6第2刷・単行本は2004、10刊行)
単行本が出たときに、人から借りて読んだ。今回の東日本大震災にあたって読み返そうと書棚を見たけど見当たらず、買おうかなと思っていたら、書店で文庫本を見つけて迷わず購入。「おもしろかった」と書くと語弊があるが、「災害読み物」としてというよりは、主人公の「敵討ち」の物語として「おもしろかった」と言うべきだろう。ただ、その「敵討ち」の方法の前提となるのが「東海地震」であり「津波」であるという点、そういった道具立てが、フィクションの形をとって地震対策への警鐘を鳴らしているということなんだろうと思った。
東日本大震災がらみで言うと、「浜岡原発」に関する記述が、かなり詳細で参考になった。
そして・・・今頃気付いた!ペンネームの「石黒耀」は「黒耀石」の「石」を頭に持ってきただけやんか!うまいことカッコいいペンネーム作ったなあ!僕もそんなペンネーム作りたいです!勉強になりました!
star4
(2011、6、2読了)
2011年6月 6日 18:14
| コメント (0)
新・読書日記
2011_099
『年収1億円思考』(江上治、経済界:2011、2、7第1刷・2011、2、28第3刷)
タイトルで売れてるんだろうな。年末ジャンボ三億円のような語呂のよさ。
中身は・・・どうなんでしょうか、人によるんでしょうね。
この間の『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』といい、ビジネス書で「おお!」というものは、なかなかないような気がします。と言うほど読んでいないので、なんとも言えませんが、「たまたま当たりが悪い」ということなんでしょうか?
star2_half
(2011、6、1読了)
2011年6月 6日 16:11
| コメント (0)
新・読書日記
2011_098
『FUKUSHIMA福島原発メルトダウン』(広瀬隆、朝日新書:2011、5、30)
浜岡原発の危険性を指摘した本書が書かれたあとに、菅総理は中部電力に浜岡原発の停止を要請しました。その意味では、本書は先見性があると言えるでしょう。でも、浜岡原発の危険性は他の本でも指摘していますし、別に浜岡原発に限ったわけはないという話も。この本、結構、売れているようです。
「想定外」というが、そもそもの「想定」した被害(津波)の規模が低すぎるために「想定外」になったと。きっちりとした「想定」をしなかったことに、今回の原発事故の原因も求められるのではないでしょうか。本書は、今回の原発事故は「人災だ」と断定しています。
star3_half
(2011、5、16読了)
2011年6月 5日 13:51
| コメント (0)
新・読書日記
2011_096
『大津波と原発』(内田樹×中沢新一×平川克美、朝日新聞出版:2011、5、30)
表記の3人の鼎談。
なんか、「高見の見物」的な感じがしてしまうのだが。もちろん、現場とは別に大所高所から大きな道筋の意見を言う人の存在も必要なのだが・・・。
ただ、これまでの日本は「問題先送りの連続」だった、それがもう「先送り」できない状態になったのだという認識は、その通りだと思う。
そんな中、内閣不信任案の採決を巡る「国会=政治家のムラ」での「コップの中の嵐」・・・これこそまたもや「問題の先送り」なのではないか。政治家として取り組むべきものが目の前にあるのに、それを見つめることを避けているとしか思えない。いつになったらそれに気付くのか。いや、「気付かないふり」をやめるのか。国民の、被災した人たちの声は、一体誰が受け止めてくれるのだ。
star3
(2011、5、29読了)
2011年6月 2日 20:31
| コメント (0)
新・読書日記
2011_095
『「事務ミス」をナメるな!』(中田亨、光文社新書:2011、1、20第1刷・2011、2、25第3刷)
光文社新書にありがちな扇情的なタイトルに"軽さ"が表れていてあまり読む気がせず、(この本が)出てすぐは、書店で手に取ろうとも思わなかったのでが、わりと評判がよさそうで、書評で見て「いいかな・・・」と思ったので購入。これが、読む前の予想とは違い(つまりタイトルのイメージとは違い)なかなか良い本なのです。「ミヤネ屋」のミス防止担当の私としては読まねばなるまい!
単なる「事務ミス」というだけでなく、大きくはそれこそ「原発事故」につながると、スリーマイル島の原発事故も引き合いに出して説明している。(これは東日本大震災よりも前に書かれたものです)
実践編「ミスの解決は6つの面から考える」では、
① しなくて済む方法を考える
② 作業手順を改良する
③ 道具や装置を改良する、または取りかえる
④ やり直しが効くようにする
⑤ 致命傷にならないための備えを講じる
⑥ 問題を逆手にとる
という6つの方法を示している。そして「『気付かない』から事故になる」では「異常検知力をつける」とあります。そりゃ、そうだ!それをみんなが身につけるのは、とっても大変な実地訓練=経験と時間がかかるのだよ。しかし、その異常検知力を高める具体的な方法までここには書かれている。詳しくは本書を!
star4
(2011、5,26読了)
2011年6月 1日 12:17
| コメント (0)