新・読書日記 2011_094
『検証 東日本大震災の流言・デマ』(荻上チキ、光文社新書:2011、5、20)
「デマ・流言」というと思い出すのは「関東大震災」の際に「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などという流言蜚語が広まって、朝鮮人の虐殺につながったという話。もちろん私が生まれる前の話ではあるが、それは物の本で読んだりして記憶に強く残っていた。
1995年阪神大震災発生時、泊まり明けのアナウンサーとしてニュースを伝えるときに思ったことは、
「決して流言蜚語の原因になるような"不確かな情報"を伝えない」
ということであった。「早さ」よりも「正確さ」を大切にしたいと考えていた。
今回の東日本大震災に伴って、私のところにも「節電のお願い」というメールが知り合いから多数、舞い込んだ。また、妻のところにも子どものPTA関係の人からからそういったメールが届いた。しかし私は「これは怪しい」と思い、送ってきた人や、その人がCCで送った人たちに「このメールの内容は怪しいですよ」という内容のメールを送った。
全国で同じようなことが起きていたらしい。それも私が接した「節電メール」以外にも多数の流言・デマが広がっていたという。それを震災発生から2か月の時点で収集・分析したのが本書。著者は「ネット炎上」など、インターネットで「情報」についての分析などを行っている1981年生まれの評論家・編集者。救援を促す流言は、本当に助けを求めている人たちの声を消してしまうとか、注意喚起を促すメールが、かえって不安を増幅させるなどの分析はなるほどと思わせた。
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