新・読書日記 2011_087
『キリスト教で見るもう一つのアメリカ』(石黒マリーローズ、日経プレミアシリーズ:2010、6、8)
著者はレバノン人で、夫が日本人。以前、キリスト教文化に関する著書を紹介したときに取材でお会いしたことがある。その後も連絡を取り合っていたのだが、ちょっとしたことがきっかけで、私から連絡を切るようなことをしてしまった。でも、欧米のキリスト教文化を日本人に伝える"伝道者"としては、一番興味深い存在であることは変わらない。
この本では、オバマ大統領が就任したときの言葉やその周辺の報道の言葉の中に出てくる「キリスト教的表現」、つまり「聖書の言葉」に基づく表現を解説してくれている。かなり専門的なので、難しく感じられるが、身近な映画やタレントも引用して、分かりやすく工夫を凝らしては、いる。
私は、この本の中に出てきた「スズメ」にハッとした。キリストが、スズメにさえも目をかけているというような聖書の中の表現があるそうなのだが、それを読んで「もしかしたら・・・」と思ったのは『コンドルは飛んでいく』の歌詞の中に出てくる、
「なれるものなら、カタツムリよりもスズメの方がいい」
という歌詞だ。中学生のときにこの歌詞を訳して、「『スズメ』も『カタツムリ』もすごく唐突だなあ」と思ったものだが、聖書の中の言葉を"下敷き"にしているのなら、それほど急な登場ではないのかもしれない。よくはわかりませんが。とにかく、知的な刺激を受けることができる本です。
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