新・ことば事情
4358「『凛凛と』か?『凜凜と』か?」
4月26日、俳優の田中実さん(44)が自宅マンションで首をつって死亡しているのが見つかりました。
このニュースで、夕刊各紙のが伝えた田中さんの1990年のデビュー作、NHKの朝の連続テレビ小説のタイトルの漢字が、微妙に違いました。
(読売)「凛凛(りんりん)と」
(朝日)「凛凛(りんりん)と」
(産経)「凜凜と」
(毎日)「凜凜と」
どこが違うか?ルビの「ある・なし」が、まず違います。次に「漢字の字体」が違います。
読売と朝日は「凛」の字のつくりの下の部分が「示」なのに対し、毎日と産経は、その同じ部分が「ノ+木」です。
この字体は、現在は両方とも「人名用漢字」で認められていますが、以前は「凜」しか認められていませんでした。(これについては、『平成ことば事情3646「凛か?凜か?」』に書きましたので、ご覧下さい。)
で、ドラマのタイトルとしてはどちらの字体が正しいのか?調べてみると、なんと、
「示」
だったのです。(NHKのホームページによる)
そもそも「人名用漢字」に「ノ+木」の「凜」が加わったのが、この連続テレビ小説が放送された1990年!しかしこの時点では、「示」の「凛」は、まだ人名用漢字に入っていなかったのです。(「示」の「凛」が入ったのは2004年!)
ということは、まだ「示」が認められていないうちから、ドラマタイトルは「示」の「凛」の方を使っていたんだなあと、なぜか感心しました。
しかし「ノ+木」の「凜」が人名用漢字に入った同じ年に「示」の「凛」の方を使うってのも、なんだかヘンだな。人名用漢字のことは全然、気にしてなかった(知らなかった)のかもしれませんが。どうなんでしょうね?