新・読書日記 2011_074
『曲がり角の日本語』(水谷静夫、岩波新書:2011、4、20)
著者の水谷静夫氏は、辞書などでお名前だけは存じていたが、お会いしたことはありません。結構ご高齢(今年85歳)だったのですね。
長きにわたり日本語をみつめてきたその水谷氏が、
「今、日本語は"曲がり角"である」
と論じる、その根拠は?「3・11」以来(本当はもっと前からだろうけど、決定的なのは「3・11」から)、日本という「国」が「曲がり角」に来ていると誰もが疑いなく感じている。その中で、日本人が話す根幹の「日本語」が曲がり角であるという水谷氏。
詳しくは第2章にあるように「七五調に崩れ」「敬語が使えない」「責任回避の婉曲表現」などに見られる、と。
そしてどうすればこの曲がり角=危機を乗り越えられるのか?については「文法論を作り直せ!」と第3章で述べている。そもそも日本語の文法は「あとづけ」ですから、どの文法も「パーフェクト」ではない。
私は第4章の「ゆらぐ格助詞」に大いに賛同。「文脈のねじれ」「『に』と『で』との混交」など、ここ数年、日々感じてきたことである。やっぱりね、と。
最後に著者は「言葉の自浄作用に期待しよう」と、「性善説」のような雰囲気だが、私は「ほうっておくと、大変なことになりますよ・・・・」と思わざるを得ない。
過去の日本人はどうやってその「曲がり角」を通り過ぎてきたのか?今後の「日本」と「日本語」の行方を知るためにも重要な一冊である。
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