新・ことば事情
4350「棯さん」
「情報ライブミヤネ屋」で、東日本大震災で被災した宮城県の漁師さんにお話を伺ったVTR。その編集に当たっていたディレクターから質問を受けました。
「その漁師さんは『みのる』さんというお名前なんですけど、ご本人が『のぎへん』ではなく『木へん』に『念』と書いて『みのる』とおっしゃっているんですが、そんな漢字、あるんでしょうか?」
「ノギヘンではなく、木へんの『みのる』」?
つまり、
「棯」
こんな漢字ですね。見たことないなあ。もしかしたらご自分だけが使っている漢字では?と思いながら、『新潮日本語漢字辞典』を引いたところ、「木へん」に「念」という漢字、なんと、ありました!
です。本来は、
「うつぎ」
と読むそうです。人名は、どんな読み方をしてもよい(ダメではない)ので、「棯」という字を書いて「みのる」と読む人がいてもおかしくないとは思います。
ただ「棯」は人名漢字でも常用漢字でもないので、そういった名前は戸籍には載せられないのではないかと思います。
本当は「稔」だが、戸籍係が書き写すときに間違えて、それが正しくなってしまった、ということは昔はよくあったそうですから、もしかしたらそういうことなのかもしれません。
「ミヤネ屋」では一応、「作字」してもらって、「木へんに念」の
「棯」
で字幕スーパー(テロップ)を出しました。