新・ことば事情
4343「流出と放出」
4月4日福島第一原発で、低濃度の放射能に汚染された水を海に流す作業が始まったことを受けて、地元の漁協は「断固として海洋投棄は停止するよう強く抗議する」趣旨のファクスを東京電力あてに送ったと、4月5日の読売新聞夕刊に出ていました。
ここで一つ問題。
「流出」と「放出」はどう違うのか?
考えてみました。うーん、
*「自然に意図していないのに流れて出てしまう」のが「流出」
*「意図して流す」のが「放出」
ではないでしょうか。辞書を引いて見ましょう。『広辞苑』では、
「流出」=流れて外に出ること。(例)重油が流出する、頭脳の海外流出
「放出」=(1)はなちだすこと。ふきだすこと。ほとばしること。(例)エネルギーを放出する。(2)貯え持っている物資などを手放して外部に出すこと。(例)放出物資、チームの選手を放出する。
大体、思っていたとおりですね。「流出」は「流れ出る」ですから「自動詞」の趣が強いのに対して、「放出」は「放ち出す」ですから「他動詞」の色合いが濃い。つまり、「意図を持つかどうか」=「他動詞かどうか」というところに違いがあるのではないでしょうか。
念のため、『精選版日本国語大辞典』を引くと(用例は省略)、まず「流出」は、
「流出」=(1)液体が流れてでること。流れ出ること(2)水に流されて移動すること。(3)内部のものが外部へ出て行くこと。特に国内にあってほしい多くのものが、国外に出て行ってしまうことのたとえにいう。
(3)の意味の用例としては「頭脳の海外流出」が挙がっていますが、これの出典は『哲学字彙』(1881)ということで、結構古くからある言葉だったんですね。最近の言葉かと思っていました。そして「放出」は、
「放出」=(1)ふき出すこと。あふれ出ること。(2)国や軍や団体がたくわえているものを、一般に提供すること。持っているものを手放すこと。
ということでした。
低濃度の汚染水の「放出」は4月10日に「ほぼ終了した」と、11日の朝刊が伝えていました。