新・ことば事情
4319「スマホ」
2月25日の朝日新聞朝刊を読んでいたら、こんな見出しが目に入りました。
「スマホ購入後値引き」
え?「スマホ」・・・って何?と一瞬考えて、本文を読んでみると、そこに出てきたのは、
「スマートフォン」
でした。つまり「スマホ」とは「スマートフォン」の略だったのです。しかし、ここで疑問が。
「『スマートフォン』の略なら『スマホ』ではなく『スマフォ』ではないのか?」
ということ。「フォ」を略すと「ホ」になるのでしょうか?
ならないこともない、かもしれません。例えば、
「ハンディキャップ」
の略は、
「ハンデ」
であり、「ハンディ」とは、まず言いません(書きません)。拗音、小さい文字の音は、略語の語尾には来にくいということがあるのではないでしょうか?それはもともとそういった「フォ」「ディ」という音が、日本語にはなかったから。もちろん奈良時代にまで遡るとあったかもしれませんが。
NTT(旧電電公社)の、
「テレホンカード」
は商品名として「ホン」です。「フォン」ではありません。「テレホンカード」が出た1980年代前半は、まだ「フォン」が定着していなかったのかもしれません。
電車の「ホーム」は「プラットホーム」の略で「ホ」ですが、IT用語で出てくる「プラットフォーム」は「フォ」です。
また、新聞では「ユニホーム」と書きますが、一般的には「ユニフォーム」と書き、言う人が多いのではないでしょうか。
まず音で「フォ」が言えるようになり一般化する(英語が生活の中に入ってきたから)、その後に文字でも「フォ」が、「ホ」に取って代わる。ただこれまで何十年もの習慣で「ホ」としているものについては、その世代がいなくなるまでは変わらない。新たに生まれてきた物については最初から「フォ」。
「アイフォーン」については、「アイホン」という「インターホン」が既にあったこともあって、表記が「アイフォーン」と「―」が入る形になりましたが、その流れもあって、「アイフォーン」のような種類の電話(携帯端末)を「スマートフォン」としたのでしょう。
今回「スマホ」と「ホ」にしたのは、「見出しの文字数を減らす」ということが最大の目的でしょうが、「フォ」で止めるのは発音がしにくい(「ホ」に比べて)という事情もあったのかもしれません。でも「インフォーメーション」を略して「インホ」と言うか「インフォ」と言うかというと「インフォ」と言う(言えそう)な気もしますが。
(2011、2、25)
(追記)
「ハンディ」とは、まず言いません(書きません)、と書いたところ、NHKの原田邦博さんからメールをもらいました。
『NHKでは「ハンデ」と「ハンディ」を使い分けています。ゴルフは「ハンデ」、「ハンディキャップ」の略は「ハンディ」として、両方を認めています。(NHKことばのハンドブック巻末「カナ表記」参照)』
そうでしたか!ありがとうございます。さっそく『NHKことばのハンドブック第2版』の281ページを見てみると、
「ハンディキャップ handicap (ゴルフ用語は「ハンデ」、略記はハンディ)」
とありました。そううかあ。
また、よく考えると、「ハンディーカメラ(handy camera)」のことを略して「ハンディー」と言いますね。「hady」だと語尾は「handicap」とは違いますが。
拗音は略語では言わないというわけでもなかったか。