新・ことば事情
4309「喪失受付センター」
先日、M銀行で通帳を作りました。
皆さん、なんといまや、窓口で通帳を係の人が直接作ってくれるのではないのですね。なんだかいかがわしい(ことはないのですが)雰囲気の、狭い狭い「個室」に連れて行かれて、なんとテレビ電話で係の人と向き合って話しながら(一応電話の受話器を使いますが、時々、それさえもなくても声を拾えるようなのです)、質問に答えてその誘導で、通帳を作るのです!必要書類も書いた後は、ファクスのようなもので電送しているみたいなんです。免許証も、キャッシュカードの入り口みたいなところに入れると読み取ってくれて、身分証明になります。
「テレビ電話の機械の裏側に、係がいるんではないか?」
と、ちょっと疑いますが、どうもそうではないみたい。行ったことはないけど、無人の消費者金融の機械って、こんな感じなんでしょうか?ちょっと信じられない気もしましたが一応信じて、だってそうしないと通帳が作れないのだから。しかも1円も預金することなく通帳は作れるのですね。というか、登録が終わった後に、ふつうのATM機のところで、「通帳作成」のボタンを押して、先ほどの暗証番号(通帳作成番号)をピポパッと押すとニュウーンって、通帳が出てきてしまうのです。うーん、21世紀だ!
さて、その狭い狭い個室。前面は機械が、左右は壁、後ろが出入り口。左右の壁には、所狭しと、いろんな貼り紙があり、テレビ電話のお姉さんが、
「右側の壁の上の方の貼り紙をお読み下さい」
「今度は、左側後方5番のポケットに入っている説明用紙をお取りください」
などと指示された、その指示通りに動くわけですな。そうすると、体をひねりすぎて(何しろ狭いですから)、
「イテテ、ちょ、ちょっとすみません、背中の腰のところの筋肉が、今ひねったときにちょっと肉離れみたいになったんですが・・・どうすればいいですか?」
「お気の毒です・・・」
というようなことになる一歩手前になるぐらい。宇宙飛行士が宇宙に行くときも、こんなに窮屈なんだろうか?と、ふと思ったぐらいのもので。
話がそれました。
その壁に貼ってあったいろいろな連絡先の一つに、こういったものがあるのに目が止まりました。
「喪失受付センター」
え、なにこれ?茫然自失で自分を喪失した時に電話するの?と一瞬でも思うことはありませんでしたが、一瞬「?」と思ったのは事実。すぐに、
「キャッシュカードや通帳をなくした場合の連絡先」
だとわかりましたが、「喪失連絡センター」、すごいネーミングですな。目的語が抜けているから、色んなものを喪失した時に連絡できそう。例えば「記憶」とか。あ、記憶を喪失していたら、連絡できないか。
ま、なんだかすごいことになっているなあという体験ができたのでした。