新・ことば事情
4302「○○難民」
先日開かれた新聞用語懇談会放送分科会の席で、委員から、
「『買い物難民』のような『○○難民』という表現を使っているか?」
という質問が出ました。各社の委員の回答は、
(NHK)「買い物に困っている高齢者」と表現。「難民」は使っていない。
(ABC)「給油所"難民"」のように"ダブル・クォーテーション"でくくることで「いわゆる」の意味を表して使った。(ラテ欄・サイドスーパー)
(日本テレビ)「買い物弱者」とした。うちは「ネットカフェ難民」という言葉を2007年に使い出した局ではあるが、「○○難民」は気を使う言葉ではある。使っちゃダメ、というわけではないが・・・。
(NHK)「ネットカフェ難民」は「ネットカフェ」に泊まっているのだから「買い物できない"買い物難民"」「給油できない"給油所難民"」などとは、言葉の使い方が違うのではないか?
というようなものでした。
この「難民」という表現、これまでも、
「ネットカフェ難民」(平成ことば事情3099)
「ポジション難民」(ことば事情3140)
「マネー難民」(ことば事情3320)
などで書いてきたほか、これまでに読んだ本の中にも、
『高層難民』(2007読書日記065)
『ネットカフェ難民』(2007読書日記215)
『北朝鮮難民』(2010読書日記1010)
などがあります。改めて「○○難民」について考えてみました。
たとえば、「ベトナム難民」は「国名プラス難民」。「北朝鮮難民」「カンボジア難民」「ナミビア難民」などはこの類です。
一方、「ネットカフェ難民」は、「避難している場所プラス難民」。
「給油所難民」は、「入りたいが疎外されている場所プラス難民」。
「買い物難民」も、「行いたいが行えない行為プラス難民」。
「ポジション難民」は、「特定のポジションに定住できない選手」。
ひとくちに「難民」と言っても、「難民」の前の言葉が示す内容が違うのですね!
コメント
「自宅難民」 自宅に居場所がない(お父さん)。ポジション難民と同じ構造でしょうか。
「ネットカフェ難民」の同類に、「MAC難民」「ATM難民」などがあるようです。
「医療難民」「老後難民」「結婚難民」「出産難民」「保育園難民」「就職難民」「昼食難民」「帰宅難民」「避難所難民」「地デジ難民」「デジタル難民」「情報難民」「IT難民」「サラ金難民」等々。
何にでも「難民」を付けるのが流行して、本来の難民の意味がないがしろにされそうです。
「○○困難者」といった別の言葉もあるのに。
投稿者: 西尾@川崎 日時:2011年02月27日(日) at 17:24