新・ことば事情
4297「盆中?中盆?」
大相撲の八百長問題で、スポーツジャーナリストの玉木正之さんに「ミヤネ屋」でインタビューをしました。そのインタビュー部分を含む原稿のナレーションを読んでいたのですが、インタビュー部分を聞いていると、
「盆中(ぼんなか)」
という言葉が出てきました。
「八百長の仲介役」
をする人のことを指す隠語だそうです。
私は相撲に詳しいというほどではないですが、現・放駒理事長が現役のときの魁傑・旭国の水入りの大相撲などはリアルタイムで見たぐらいですし、普通レベルに知っているつもりですが、「盆中」という言葉は初めて知りました。
ちょっとそれが気になっていたのですが、放送後に『サンデー毎日』や『週刊文春』の八百長に関する記事を読んでいると、仲介役のことは、
「中盆(なかぼん)」
と出ているではないですか!あ「中盆」なら聞いたことがあるぞ!とすると、玉木さんはたまたま間違ったか、ひっくり返したのか?
その後ネット検索をしてみたら、玉木さんは「あえて」「わざと」、「中盆」のことを「盆中」と言っているようだと思われる記述が出てきました。もともとは「盆中」が正しくて、それを「隠語」なので「倒語」で(ひっくり返して)「中盆」とみなは言っているのだ、と。
玉木さんのコラムで、ジャーナリストの高野孟氏が主宰するウェブメディア『ざ・こもんず』に寄稿したもの(2007年2月18日アップ)の中に、
「八百長vs出来山」の大一番~大相撲に『八百長』は存在するのか?
というのがあって、その中で、
「いいや。出来山じゃない。盆中だったかもしれない」
「ボンナカ......? ナカボンじゃないんですか?」
「中盆は盆中をひっくり返した隠語で、盆中を取り次ぐ力士のことを言いますな」
「ボンナカ......」
とあったのです。「盆中」=「八百長」でそれを取り次ぐ人も「盆中」?
そうすると玉木さんの発言として「盆中」と出したのは間違いではなかったけれど、玉木さんがそういう主張をしていると知らない相撲ファンは「間違ってるんじゃないか?」と感じたでしょうから、ちょっとそのあたりの注釈なりを付けるべきではなかったか、と思いました。
また東京スポーツのサイト(2011年2月7日)には、
『八百長は「注射(ちゅうしゃ)」、相手に分からないように負ける片八百長は「盆中(ぼんなか)」、八百長仲介者を「中盆(なかぼん)」と呼んでいる。』
とあります。これが正しいとすると、「盆中」と「中盆」は意味が違ってくることになるのですが・・・。
なおネット検索では、
「盆中」「八百長」= 713件
「中盆」「八百長」=1万0200件
でした。ボンボン、ナカボン、ナカボン、ボン・・・。
(2011、2、10)
(追記)
2月11日の毎日新聞「論点」で「どうみる大相撲・八百長問題」と題して識者のコメントが寄せられています。その中で玉木正之さんも意見を述べられていて、そこでは、
「盆中(いわゆる片八百長)」
「中盆(その仲介者)」
と注釈をつけて区別して使われていました。
また、読者の「かくた」さんからも、
『玉木正之公式WEBサイト「カメラータ・ディ・タマキ」の日記や蔵出しコラムを読みますと、
「出来山」=八百長
「盆中」=片八百長
「中盆」=八百長の仲介者
と、きちんと区別して使われていますよ。
(http://www.tamakimasayuki.com/sport.htm)』
とご指摘いただきました。ありがとうございました。
コメント
玉木正之公式WEBサイト「カメラータ・ディ・タマキ」の日記や蔵出しコラムを読みますと
「出来山」=八百長
「盆中」=片八百長
「中盆」=八百長の仲介者
と、きちんと区別して使われていますよ。
http://www.tamakimasayuki.com/sport.htm
投稿者: かくた 日時:2011年02月14日(月) at 17:22