新・ことば事情
4283「ちゃらちゃら」
詩人・茨木のり子の評伝『清冽~詩人茨木のり子の肖像』(後藤正治)を読んでいたら、茨木のエッセイ「『櫂』小史」に、茨木のり子第一詩集『対話』に収録された詩「根府川の海」が出てきました。根府川というのは、(東京から)小田原を過ぎて熱海に着く手前にある川の名前だそうです。
《たまたまその日は、成人の日で休日。夫と一緒に新宿へ映画「真空地帯」を観にゆくことになっていたが、一寸(ちょっと)待ってもらって、原稿用紙に向い、十分位で、ちゃらちゃらと書いたのが「根府川の海」である。》
ここで出てきたのが、
「ちゃらちゃら」
です。これは、
「軽くて、手抜きの感じ」
のする擬態語です。そして思い出すのは、『男はつらいよ』。渥美清演じるフーテンの寅さんの啖呵売(たんかばい)のセリフ、
「四谷・赤坂・六本木、ちゃらちゃら流れるお茶の水」
です。
1回だけの「ちゃら」で思い出すのは、「Chara」の「スワローテイルバタフライ」。これは好き名曲です。
先日、5歳の娘に、この「ちゃら」を使われました。
家でお風呂にお湯を張る前に、浴槽を洗ってきれいにしてからお湯を入れるのですが、「お風呂、入れて!」と妻に頼まれた私が、その風呂掃除をしてからお湯を入れ始めるまで、ものの30秒、あっという間にやったところ、娘が一言、
「ホンマに洗ったん?また、"ちゃら洗い"とちゃうの?」
こらこら、仮にも親に向かって、なんちゅう口の聞き方!誰に聞いたんや、そんな「ちゃら洗い」なんて言葉は!
マセてやがんな、もう!