新・ことば事情
4260「焼け跡」
年末、火事のニュースが相次ぎました。
「焼け跡から○○の遺体が見つかりました」
というニュースを見ていて痛ましいと思うとともに、
「焼け跡」
の表記が気になりました。当然「あと」は「跡」と書くのですが、今回の常用漢字の改訂で、新たに「痕」という漢字が常用漢字に加わりました。
それによって「跡」と「痕」の漢字の使い分けはどうするか?という問題が出てきたのですが、それに関してハタと思いつきました。
つまり、「焼け跡」は「跡」を使い、決して「焼け痕」とは書かない。なぜか?それは、
「『跡』の方が範囲が広く、『痕』は範囲が狭い」
からではないか?ということです。
今回の常用漢字の改訂に伴い、日本新聞協会の新聞用語用語懇談会が『新聞用語集2007年版』の「追補版」を出しましたが、それによると、「跡」と「痕」の使い分けは、
*「跡」=(物事の行われたあと。相続。行跡)足跡、跡形もない、跡取り、跡目相続、跡を絶つ<消息>、苦心・努力の跡、立つ鳥跡を濁さず、犯行の跡
*「痕」=(くっきりと残ったあと。主として人体)手術・注射・やけどの痕、戦争の傷痕、台風の爪痕、血の痕
となっていました。さらに一言、<注>として、
「『跡』か『痕』か迷う場合は『跡』を使う」
と書かれていて、「跡」の方が使用範囲が広いことをうかがわせていました。
ともあれ、火の元にはご用心を。