新・読書日記 2010_249
『殺して忘れる社会~ゼロ年代「高度情報化」のジレンマ』(武田徹、河出書房新社:2010、11、30)
表紙が女子高生のマンガチックなイラスト。それにこのタイトル。そのギャップが、現代社会の世相を現しているとも言える。そういう狙いも、あるのかもしれない。
著者・武田徹といえば「戦争報道」に関する著作が有名だが、本書はその彼のここ10年ほどの(つまり「ゼロ年代」の)コラムをまとめたもの。
21世紀に入る数年前から、まさに「世紀末」的な出来事がいくつも起こって、21世紀に入った2001年には「9・11」テロが起き、そのショックを引きずった10年が過ぎてしまったような気もする。その一つ一つの局面で、「おかしいぞ!」と著者は警鐘を鳴らしている。それを一つ一つ繋いでいくと、まるでジグソーパズルのように、「現代」という完成図が見えてくるのではないか。
「殺して忘れる」というのはおどろおどろしい「タイトル」だが、「刹那(せつな)的」に「集団的過剰反応」を起こすという「現代日本社会」の特徴を、冷静に一言で言い表しているように思えた。
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