新・ことば事情
4249「皇子はオウジか?ミコか?」
んごしづか)」に隣接する墓が、
「中大兄皇子の娘・大田皇女(おおたのひめみこ)の墓」
と分かったという記事を載せていました。その中で、
「皇子」のルビ
ですが、「中大兄皇子」「大海人皇子」に関して読売新聞だけ、
「みこ」
としていて、他社(朝日・毎日・産経=大海人皇子のみ出てきました)は、
「おうじ」
でした。産経は「中大兄皇子」は記事に出てこず、「大海人皇子」に「おうじ」、「大津皇子」には「みこ」とルビがありました。(下に一覧を載せます)
「中大兄皇子」 「大海人皇子」 「大津皇子」
(読売)みこ みこ ***
(朝日)おうじ おうじ ***
(産経)*** おうじ みこ
(毎日)おうじ おうじ おうじ
(日経)ルビナシ ルビナシ ルビナシ
そこで質問です。
「皇子」を「おうじ」と読むか「みこ」と読むかの基準は、何かあるのでしょうか?
朝日新聞のFさんに聞いてみたら、
「朝日としての使い分けはありません。『皇女』が『ひめみこ』なら『皇子』は『みこ』でいいように思いますが、原稿にあったとおりにしたようです。『広辞苑』みたいな百科辞書類は『おうじ』、山川の教科書は『みこ』ですね。」
というお返事を。また読売新聞のSさんからは、
「おそらく、『ひめみこ』とそろえたのではないかと推察します。他紙は、呼称をそろえるより、一般的な言い方の『おうじ』を採ったのでしょう。『皇女』を『こうじょ』とするやり方もあったかと思いますが、こちらは『ひめみこ』が一般的なのでしょうか。」
とし、さらに文化部の記者にも聞いてみてくれるとのことでした。
後日またメールが届きました。
「東京の文化部考古学担当に聞いてみました。『みこ』と読むか『おうじ』と読むかは、基準・原則などはなく、呼び習わされてきたものによるそうです。『中大兄皇子』は『おうじ』が一般的だが、『みこ』の読みもあり、『草壁皇子』は『みこ』で『おうじ』と読むことは少ないなど、習慣上そうだというしかないようです。『皇女和宮』は『こうじょ』ですね。先日のメールにも書いたように、『ひめみこ』にそろえて、許容範囲である『みこ』とするか、『ひめみこ』とはそろわないが、より一般的な『おうじ』とするかの選択だったということです。やまとことばを使うか、漢語でいくかということとは、また別の問題でしょうか。」
詳しく聞いてくださり、ありがとうございます。
さらに、読売新聞のOBの元・文化財担当記者で、週に何日か読売テレビに来てもらっている方に伺うと、
「昔は全て『みこ』。直木孝次郎も『みこ』と言っていた。考古学者はみんな『みこ』。『おうじ』なんて呼ばれるようになったのは最近のこと。」
ということでした。うーん、なかなか難しいですねえ。