2年前の8月に「平成ことば事情3334グーグルのアクセント」を書きましたが、ここに来て、尖閣の映像のユーチューブへの流出問題で、ユーチューブを運営する会社として「グーグル」に焦点が集まりました。
放送各社の「グーグル」の発音を聞いていると、特に統一されているわけではなく、ばらつきが見受けられます。私は、「頭高アクセント」の、
「グ\ーグル」
が好き・・・というか、「平成ことば事情3334グーグルのアクセント」に書いたように英語の発音にも近いだろうし、「頭高」しか使ってこなかったので、「平板アクセント」には違和感を覚えます。
オンエアーを注意して聞ていると、(よくOAで見るので、トップバッターに挙げさせてもらって申し訳ないのですが)日本テレビの豊田順子アナウンサーは「平板」の、
「グ/ーグル」
を、お昼の「ニュースダッシュ」でよく使っています。
昨日(11月9日)の日本テレビ「every」で藤井貴彦アナウンサーは、「頭高」の
「グ\ーグル」
でした。また、テレビ朝日の坪井直樹アナウンサーや、NHKのお昼のニュースを読んでいる男性アナウンサーも、「頭高」の
「グ\ーグル」
でした。ということは、「男女で違う?」とも考えましたが、読売テレビの若手男性アナウンサー2人は、以前、「平板」の
「グ/ーグル」
でした。ということは、
「若い人は『平板』なのか?」
とも思います。正解はおそらく、
「使い慣れている人は『平板』、そうでない人は『頭高』」
になっているのではないかとは思います。
私は10年以上Googleを愛用していますが、やはり昔はみんな、
「グ\ーグル」
と「頭高アクセント」でした。「平板」が最近の傾向なんでしょう。
「平板アクセント」を使っている日テレ・豊田アナウンサーに、その辺の事情に付いて聞いてみたところ、
「外来語・横文字・カタカナの言葉のアクセントは本当に迷うが、『グーグル』(特にインターネット関連の用語)に関しては、私もかつては頭高(英語発音を基本)で発音していましたが、認知度や、利用している人の広まり具合を意識して、その都度考えております。『グ\ーグル』と発音することでその言葉がひっかかり、ニュースの本当の意味での大切な内容が聞き流されてしまってはマイナスとの考え『も』あるからです。こういう言葉は、少しフレキシブルに考えて使っています。」
という内容の大変丁寧なメールを頂きました。ありがとうございます!
そのほか、用語委員会でご一緒している日本テレビ解説委員の井田由美さんにも聞いてみたところ、
「私も『頭高』派ですが、同年代の会話を聞いていても『平板』の方が多いようですね。」
というお返事が。
読売テレビのアナウンサーはどういう傾向か?
(1) ふだん
(2) OA時
で、それぞれどのようなアクセントを選んでいるか聞いてみたところ、以下のような返事がキ届きました。
(50代男性アナ)「平板」は聞いているほうとしても、普段も気持ちはよくないから「頭高」の「グ\ーグル」。あくまでも私見。
(20代女性アナ)ふだんは「平板」の「グ/ーグル」、OAでは「グ\ーグル」。ほかのアナウンサーの人たちが読んでいるのを聞いて、知った。
(30代男性アナ)ふだんもOA時も、「グ\ーグル」(頭高)です。「平板」は気持ち悪い。 「ツ/イ\ッター」(中高)も同じ。平板反対!
(30代女性アナ)両方とも、「平板」。
(40代男性アナ)ふだん・放送時、ともに「頭高」の「グ\ーグル」。「平板」だと、自らがネットのヘビーユーザーであることを暗に主張している印象を受けるので、今後日常で「平板」で言うことになっても、少なくともニュースでは「平板」で読むことはないと思う。
(50代男性アナ)「頭高」の「グ\ーグル」。もうオッサンなので、正しくないと思うが・・・。
(30代男性アナ)ふだんは「グ/ーグル」(平板)、放送では「グ\ーグル」(頭高)。「頭高」に関しては、その時なぜか無意識にで読んでいた。
(20代男性アナ)私は「ふだん」「OA時」とも「平板」で「グ/ーグル」。
(30代女性アナ)ふだんは(1)(2)どちらのアクセントも使っている。もしもニュース原稿に出てきたら・・・なんとなく「頭高」の「グ\ーグル」で読むような気がする。
(20代女性アナ)ニュースでよく聞くのは「頭高」だが、どちらも「平板」の「グ/ーグル」で読んでいる。
(40代男性アナ)「頭高」での読み方「グ\ーグル」のみです。
(40代男性アナ)常に「平板」の「グ/ーグル」。
(20代女性アナ)「ふだん」「OA時」とも「平板」で読んでいる。 ただ、OAでは「頭高」が多いような気もする。
(20代男性アナ)普段もオンエアも「グ/ーグル」と「平板」で読んでいる。
(30代男性アナ)「頭高」かなと迷いつつ、「平板」の「グ/ーグル」で伝えると思う。
(20代男性アナ)普段もOA時も「平板」の「グーグル」で読んでいる。「グーグル」という言葉が出始めのころ(10年前くらい)は、「頭高」で読んでいた気がするが、いまでは、「平板」でなければ、違和感がある。
(20代女性アナ)普段もOAも「平板」。ニュースを聞いていると、「頭高」が多かったように思うが・・・。
(30代男性アナ)個人的には、「グ\ーグル」は、「頭高」。でも、放送で使用する際は悩む。この件についてほぼ100%、日テレ・豊田さんのご意見に同意する。唯一違うのは、東京では「平板」にしたほうが、大阪では「頭高」にしたほうが「違和感を感じない」のではないかということ。そうなりつつあるのが「グーグル」というコトバなのではないかと。標準語は「東京アクセント」に基本あわせるという原則に従うならば、放送では基本「平板」でいくべきなのか?とも思うが、「違和感を感じさせない」かつ「まだ、アクセントが、明確にかたまり、定着していない」ことから考えれば、関西ローカルの放送では「頭高」でいってもいいのではないか?現時点ではまだ「正解はない」と思う。「サポーター」や「クラブ」や「超」のたどってきている変遷と似ているところがあるようなないような・・・。
「男女」で分けてみると、以下のようになります。
(男性=網掛け)
(1)=ふだんは?
<頭高>= 6 牧野、大田、萩原、森、小澤、道浦、野村
<平板>=10 山本、林、小林、尾山、川田、虎谷、本野、清水、立田、吉田
<両方>= 1 森若
(2)=OAでは?
<頭高>=9 牧野、林、大田、萩原、森、尾山、森若、小澤、道浦
<平板>=8 小林、山本、川田、虎谷、本野、清水、立田、吉田、野村
*「ふだん」と「OA時」でアクセントを変えている人=尾山、林、(森若)、野村
というような結果でした。やはり「若い人」が「平板アクセント」を使っている傾向が強いようですが、「ふだん」と「OA(放送)」で使い分ける意識を持った人もいるということですね。
まさに「言葉は生き物」。それをどうアナウンサーが扱うかは、大変難しい問題だと思いました。でも「実態把握」は、まず必要ですよね。誰もあまり、やらないけど。
なお11月19日の『ズームイン!!SUPER』に出演していた池上彰さんは、
「グ\ーグル」
と「頭高アクセント」でした。
また、11月18日に新聞用語懇談会総会でお会いしたフジテレビの川端健司アナウンサーに伺ったところ、
「普段もOAでも『グ/ーグル』と『平板』ですね」
と話していました。ただ、OAで「グ/ーグル」をしゃべる機会は、今までになかったそうです。
(2010、11、22)