新・読書日記 2010_217
『国家の命運』(薮中三十二、新潮新書:2010、10、20)
帯には「外交の修羅場で考えた危機と希望」。
薮中さんと言うと、アジア太洋州局長時代の北朝鮮との6か国協議のイメージが強いが、その後、外務事務次官を務めて、今年退官(?)されていた。
もともと大阪出身。そういう(大阪の)イメージはなかったなあ。大阪大学在学中に外務省の試験に受かって、中退して外交官になったそうだ。
大変勉強になった一冊。
「第四章 外交交渉の要諦」は基本的なことだが、「第五章 北朝鮮はなぜ手ごわいか」は、実際に北朝鮮と交渉に当たった張本人だから書けることだと感じる。また、「第六章 海洋国家の矜持」は、今まさに日本国民の関心の中心になっている尖閣問題、北方領土問題などに、どう立ち向かうべきか、現場での外交官の話だから、大変興味深い。さらに、この文字を見ない日はないというぐらいに毎日出てくる「TTP」に関しては、「ベトナムの戦略を見習え」とアドバイスしている。そのベトナムから先日、原発の開発を受注し、レアアースの開発でも合意した。こういった外交政策は、実は着々と進んでいる面もあるのだなと注目している。
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