新・ことば事情
4189「パウル君天国のゴール」
2010年10月27日の各紙朝刊に、南アフリカワールドカップで一躍有名になったドイツのタコ「パウル君」が死んだという記事が載っていました。一般紙のその記事の見出しは、
(読売)パウル君天国へ
(朝日)予言ダコ天に召される~パウル君老衰で
(毎日)パウル君逝く
(産経)パウル君天国に"ゴール"
(日経)W杯予想的中~タコのパウル君大往生~2歳9か月老衰
スポーツ紙は、
(日刊スポーツ)死んじゃったパウル君
(スポーツニッポン)予言ダコパウル君死す
(スポーツ報知)パウル君大往生
でした。(ま、「予言」ではなく「予想」でしょうけどね。)
動物が死んだ時には「死亡」は使わないというのはかなり浸透しているようで、「死亡」とした記事は見かけませんでした。しかし、単に「死んだ」だと芸がないので、各社いろいろと工夫を凝らしています。
「天国」
は過去に見たことがありますが(「平成ことば事情136海くん、死亡」「271犬、死亡」「4068すなめり死亡」参照)、
「天に召される」
は初めて見ました。「天国」でも十分キリスト教の香りがしますが、「天に召される」だとその傾向がさらに強く感じます。「パウル」って名前、「十二使徒」の中にいましたよね?いませんでしたか?
産経新聞の、
「天国に"ゴール"」
というのは、サッカーワールドカップの試合予想で有名になったので、サッカーの得点の「ゴール」というのと、競走などでの「ゴールイン」をかけているのでしょうね。でも、ちょっと意味が違うかと。
日経と報知の、
「大往生」
は、死因が「老衰」で、タコとしては長生きだったのでしょうけど、
「2歳9か月」
に「大往生」はそぐわないような・・・。それにしても、タコってもっとずっと長生きするイメージがあったのですが(海底の大ダコなんて、何百年も生きていそうな・・・『海底二万マイル』のイメージでしょうか?)
毎日の、
「逝く」
はシンプルですが、これもかなり擬人化されてないと使いにくいですよね。タコだし。
スポニチの
「死す」
は、「ヴェニスに死す」みたいでカッコイイ。
日刊スポーツの
「死んじゃった」
は、かわいい感じがします。意外!というイメージも。
パウル君は、死後に火葬されるそうですが、「骨」は、ないよなあ。