新・ことば事情
4179「『はしかい』と『はしこい』」
和歌山に住む妻の両親が、山ほど料理を作って我が家に来てくれました。その中の一つが「サトイモ」料理。その際に義父が、
「サトイモの薄皮をむくと『はしかい』」
と言いました。意味がわかりにくかったのですが、なんとなく
「はしかい」=「かゆい」
の意味のようだとわかりました。三重出身のうちの両親も来ていたので、
「『かゆい』の意味で『はしかい』と言うか?『はしかい』は方言か?標準語か?」
という話題になりました。
「すばしっこい事も『はしかい』って言いませんか?」
という意見も。で、調べてみました。『広辞苑』を引くと疑問はすぐに解消!
そもそも「はしかい」の語幹「はしか」は名詞で「草冠」に「亡」。「芒」という漢字で「のぎ」とも読みます。「すすき」とも読みます。二十四節季の「芒種(ぼうしゅ)」の「ぼう」。「麦などの穂」のことを言います。その形容詞化したものが「はしかい」。意味は、やはり、
「かゆい、むずむずする、ちくちくして痛がゆい、こそばゆい」
ということです。
そして、「すばしっこい」の意味の「はしかい」は、正しくは、
「はしこい」
ですね。「機敏」の意味。それがおそらく訛ったもので「はしかい」と言われることもあるのでしょう。『精選版日本国語大辞典』には「はしかい」が「はしこいの変化した語」としてきっちり載っていました!用例は1638年の「仮名草子・清水物語」から。なお「はしこい」の強調形は、「す」が付いて、
「すばしっこい」
「裸」に「す」が付いて「すっぱだか」となるのと同じ強調形です。そういうことだったのか。