新・ことば事情
4173「『展示会』のアクセント」
関西出身で2年目のTアナウンサーの読むニュースを聞いていたら、
「展示会」
を「平板アクセント」で、
「テ/ンジカイ」
と読んでいました。これはまだアクセント辞典には載っていないアクセントです。たしかに「○○会」という言葉はかなりの勢いで、「平板化」しています。つまり、
「○/○○\カイ」
というふうに「カイ」の前でアクセントが下がる「中高アクセント」から、
「○/○○カイ」
というふうに、「下がらない、『「平板アクセント」」に変化してきています。しかし、全てが「平板アクセント」に変わったかと言うと、そうではありません。
NHK放送文化研究所が出している『放送研究と調査』という専門雑誌の2010年5月号に、次のアクセント辞典改定に向けてのNHKアナウンサーのアクセントの現状調査の報告が載っています。
それによると、調査は2009年10月5日から11月13日にかけて、NHKのアナウンサー493人(有効回答は471人)についてイントラネットによる音声聴取及び適否判定によって行われたそうです。年齢層とその人数は、若年層(23歳~34歳)が約200人、中年層(35歳~44歳)が約180人、そして高年層(45歳以上)が約120人だったとのこと。
その調査によると、「後部要素が一字漢語の複合名詞(おおむね5拍以上)」は、「中高型→平板型」への変化の傾向がはっきりと現れたそうです。「後部要素が一字漢語の複合名詞」というのは、
「如意棒」「予備金」「二次会」「日本史」
のようなもの。「漢語+棒(金・会・史)」のような形の複合名詞です。これはそのほか、
「機関砲・木戸番・模擬店・師範代・未定稿・自治会・自衛艦・木戸銭・許可証・指南役・健忘症・悔やみ状・産婆役・担保品・拘引状・随意筋・大病人」
などだそうです。ただ一般的に言われるように、「アクセントの平板化」婦だけが進んでいるのではなくて、「平板型→中高型」への変化も見られて、特に「複合動詞」ではその傾向が強いとのこと。本来「平板」であったものが「中高」に変わってきているものには、
「見やる・見舞う・成り行く・彫り込む・射殺す・出し抜く・かっ込む・け上げる・見飽きる・持ち帰る・出っ張る・受け継ぐ・切れ込む・とじ込む・見立てる・見開く・勝ち越す・勝ち抜く・繰り越す・締めこむ」
などがあるそうです。これに関して私は、
「複合動詞の前項が接頭辞的で、後項の意味が主体だったので、平板から中高アクセントに変わってきたのではないか?」
と思います。
とにかく、言葉は時代とともに変わっていくものですが、その変化の真っ只中にいる私たちは、きっちりとそれを見守って行きたいと思います。