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『道浦TIME』

新・読書日記 2010_194

『滝山コミューン一九七四』(原武史、講談社文庫:2010、6、15)

 

2010読書日記123で書いた『団地の時代』(原武史・重松清、新潮選書:2010、5、25)、この対談のきっかけとなったのが本書。「読まねば!」と思って文庫本を買ってきたら・・・家に単行本がありました。出てすぐに買って、まだ読んでなかったのね。こんなの、ばっかし。

著者の原武史先生とは(面識はないが)同世代(彼の方が1つ年下)で「団地育ち」という点も同じなので、共感できる部分もあるが、この「滝山団地」のような「思想的な一体感」は、うちは強くはなかった。

私がこれを読んで思い出したのは、やはり1970年前後に漂っていた「左」の空気。ここに出てきた、「遠山啓」の数学の「水道方式」などは聞いたことがある。「遠山啓」の名前はもちろん知っている。「班学習」「班ノート」もあった。「班」の起源が、旧日本軍の「班」であり、「隣組」にあったとは知らなかった・・・。

当時の若い教師の中に「学生運動崩れ」の人がいたらしいことも、聞いてはいた。私の体験で言えば、ある地区の中学からは特定の公立高校(新設校)へ行くことを、半ば強制させられる「地元集中」という運動があった。指定の地元校でない高校を受けたいと言っても、先生に願書を書いてもらえないというような「いじめ」があった。そういった臭いをプンプンとさせていた。個人よりも全体を優先させる「思想」の臭いがしたので、私は反発した。このあたりの話をすると、今でもとても熱くなれる。ま、ここでは、すまいが。

で、「滝山コミューン」が見せた「民主集中制」と、大阪府の橋下知事が目指す「民主集中制」は「同じ臭い」がする。つまり「権力者の独裁」である。そこの不安が払拭されないと、一つにまとまるのは難しいと思う。

 


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(2010、9、19読了)

2010年10月13日 10:01 | コメント (2)

コメント

ひぇー懐かしいぞ、遠山啓。30数年振りにその名前を聞いた。
彼の「数学入門(上・下)を読んだのは中3の時だ。人に勧められての事だったが、夢中になって上下巻を読んだ。人より賢くなった気がして妙にうれしかった。高校で理系を選択したのもこの本が原因だ。数年後、この選択が間違いだったことに気づいた。私は文系人間だった。人生を左右させた1冊だった。今改めてそう思った。

投稿者: yoshi-q 日時:2010年10月14日(木) at 22:39

遠山啓は日教組の教研集会顧問だったため文部省から敵視されていましたが、「水道方式」自体は非常に合理的な教授法なので、現在の小学校初級の算数教科書のほとんどがその亜流といってよい記述になっています。
特徴的な“タイル”を使った説明は、40代なら懐かしの「カリキュラマシーン」で記憶にあるはず。ちなみに遠山は吉本隆明の師匠筋にあたります。

投稿者: かくた 日時:2010年10月15日(金) at 23:38