新・ことば事情
4145「霍乱」
夏井なつきさんの『絶滅寸前季語辞典』(ちくま文庫)という本を読んでいたら、
「霍乱」
という言葉が出てきました。「かくらん」と読みます。
「鬼の霍乱」
という言葉で知っていますが、何かの病気のことですよね。「暑気あたり」だっけ?あるいは「風邪」?
これが何を指すかが辞書によって(時代によって)違うのだそうです。
「日射病」「急性胃腸カタル」「コレラ」「チフス」
などが挙げられているとのことですが、これらの病気(だじゃれではありません)、全然違う病気でよね。「霍乱」が指す本当の病名は何なのでしょうか?
私も調べることに致しましょう。
*『広辞苑』=暑気あたりの病。普通、日射病を指すが、古くは吐瀉(としゃ)病も含めて用いた。<季語・夏>鬼の霍乱
*『明鏡国語辞典』=漢方で日射病。また、激しい吐き気や下痢を起す急性病。
*『精選版日本国語大辞典』=(「きかくりょうらん(揮霍撩乱)」の略。もがいて手を激しく振り回す意から)暑気あたりによっておきる諸病の総称。現在では普通、日射病をさすが、古くは多く、吐いたり下したりする症状のものをいう。今日の急性腸カタルなどの類をいったか。<季語・夏>
*『デジタル大辞泉』=漢方で、日射病をさした語。また、夏に起きやすい激しい吐き気・下痢などを伴う急性の病気をいった。(用例)蘆花・『不如帰』「霍乱と云いける虎列刺(これら)に斃(たお)れ」
*『三省堂国語辞典』=暑さにあたって、はいたりくだしたりする急性の病気。暑気あたり。
*『新明解国語辞典』=「日射病・急性腸語るなど、夏起しやすい急性の症状」の意の老人語。
*『新潮現代国語辞典』=漢方で、日射病。又は夏に激しい吐き気・下痢を起す急性の病気。
うーん、似たり寄ったりの記述ですが、一番納得するのは、『広辞苑』と『精選版日本国語大辞典』の説明でしょうか。あと、『新明解』では、「老人語」にされています。確かに若者は使わないだろうけれども。