新・ことば事情
4138「うまくいってないっぽい」
朝井リョウ『霧島、部活やめるってよ』(集英社)を読んでいたら、こんなセリフ(会話文)が。
「なんか孝介とかとうまくいってないっぽいぜ。」
この「っぽい」の使い方が"今風"の「若者言葉」です。
これまでだと「っぽい」は、
「うそっぽい」「素人ぽい」「テレビっぽい」
のように「名詞」の後に付いて、
「その名詞(もの・人)に似ているさま」
を示していたのですが、今の「若者言葉」としての「っぽい」は、
「用言(動詞や形容詞など活用するもの)の終止形」
に付いて、
「どうも、そのような状態であること」
を示す「婉曲表現」として使用されている"っぽい"のです。という具合に。
これも「直接(ダイレクトに)指摘することを避ける傾向」がそうさせているんでしょうね。物を食べた感想で、
「おいしいかもー」
と女性が言い出した「10年ぐらい前から」始まっていますよ。
でも、これが行きわたってみんなが使うようになれば、形の上では「っぽい」が付いた婉曲表現でも、「ダイレクトで言っているのと同じ状態」になるでしょう。そうするとさらに「ぽい」とか「感じ」、あるいは「みたいな」をつけて、
「なんだか、やってるっぽい感じ、みたいな」
という、やってるのだか、やってないのだかわからない表現が出てくるのではないでしょうか・・・。心配じゃあ。