新・ことば事情
4130「教誨師か?教戒師か?」
去年11月の新聞用語懇談会の秋季合同総会(2009、11、17)の席で、
「教戒師」「教誨師」
の表記について、NHKの委員から質問が出ました。それによると、
『NHKの新用字用語辞典では、「きょうかいし」は代用字の「教戒師」を使うことにしています。『新聞用語集』も「教戒師」です。各社の用語集を見ても一部「教誨師」(ルビ付き)としている社もありますが、ほとんどは「教戒師」です。しかし、実際の記事では「教誨師」の表記も多く見られるようです。
「誨」は、「さとし教える」という意味ですし、「戒」は「いましめる」という意味なので、発音は同じでも意味はまったく異なるという社外からの指摘もあります。各社は、どちらの字を使っていらっしゃいますか。「教誨師」に変えた社があれば、いつごろから、どのような判断で変えたのでしょうか。 両方つかっているとしたら、どのような使い分けをしているのでしょうか。今後の参考にしたいので、教えていただければと思います。』
これに対する各社の意見は、
(読売新聞)『スタイルブック2008』では「教戒師」だが、その後「死刑」の連載で取り上げた「全国教誨師連盟」から「誨」の字を使うよう強い要望があり、『2009年版スタイルブック』(PDF版)から「教誨(きょうかい)師」とした。
(毎日新聞)2009年6月から「教誨(きょうかい)師」とした。動詞の「教戒」は「戒」、「教誨(きょうかい)師」は「誨(かい)」と使い分けている。
(共同通信)「ハンドブック」は「戒」。所属団体名など固有名詞で「誨(かい)」を使うこともある。
(朝日新聞)2000年の「手引き」から「教誨(きょうかい)師」とした1999年の遅い時期に団体から申し入れがあった。動詞の「教戒」はそのまま。
(産経新聞)今年3月「受刑者~判決から始まる日々」という記事で「教戒師」としたところ、千葉と東京・府中の「教誨師」から「間違いだ」と指摘があったが、社として「教誨師」に変えるという動きは、今のところない。
というものでした。
それから9か月、2010年8月28日に東京拘置所の「刑場」(死刑執行場)がマスコミに公開され、それを伝える各社のニュースの中に、
「教誨師」
という言葉が出てきました。読売テレビの「情報ライブミヤネ屋」では、
×「教戒師」→○「教誨師(きょうかいし)」
としました。もともと正しい表記は「教誨師」でしたが、「誨」が表外字なので長い間、新聞も放送も(そんなに使う機会はなかったものの)「教戒師」というふうに「戒」を代用字として使ってきました。しかし近年、「正しい表記を使ってほしい」という「教誨師」側からの要望もあり、新聞が昨年あたりからルビを付けて「教誨師(きょうかいし)」を使うようになってきていたというのがその理由。またキー局の日本テレビも、ルビ付きで、
「教誨(きょうかい)師」
としていたことが理由です。
8月27日金曜日の全国紙各紙夕刊は、全てルビを振っての、
「教誨(きょうかい)」
を使っていました。「教戒」を使った社は、ありませんでした。